2021年04月20日

MIJ-14PAR Type2/K2の長期ドリフのト例、屋外設置2.4年後3.5年後の例

MIJ-14PAR Type2/K2の長期ドリフのト例、屋外設置2.4年後3.5年後の例

光センサーのうち特に弊社ではPAR (Photosynthetic Active Radiation sensor)に力を入れており、2007年あたりから初期型の量産に入った履歴があります。もちろん植物関連のパラメーターだからという理由です。弊社のPARは初期型から徐々に改良を続け、Type2になってからは、特にアンプレスのK2型は仕様変更もないままに継続生産中のモデルです。出荷数からも累積で1200を超えており、ロングセラーと言って良いと思います。

ロングセラーに結びつく直接的な要因は耐久性じゃないのかなと推測しています。ものを買うとき忘れがちな耐久性の良し悪し。近年は想像を絶するほどモラルの低いごく一部のユーザーのせいで、スペックシートに書けない項目でもあり、現代ではもはや評価基準にさえならないということは悲しいけど言えてしまう現実です。とは言えとっても大事なというかむしろ屋外で使う機材と考えると一番重要な性能の一つです。こういう部分は作り手の善意を入れやすい性能でもある一方で、耐久性を上げるために工夫した部分というのは、外からは見えにくい部分でもあります。

見えない部分だからどうでもいいや、壊れたらまた買ってもらえば良い、そんなことよりも販売価格を下げられるようにコストを下げる努力をするのだよ、という解釈も商売的には正解ではあります。だけどやっぱり日本的な性質を持つ人間が設計するとそういう気持ちには全くなれない部分、完全に拒否したい考え方です。

K2はユーザーにおいても繰り返し購入、継続して使用していただいている方が多くいらっしゃるモデルで、使い慣れた方(プロの方々)からのリクエストとして、2〜3年ごとの再校正の依頼を良く受けています。プロの方々はこの再校正をとても重要視して購入を判定していますから、その期待に答えるべく、迅速に再校正や修理を実施することは弊社では最優先案件として扱っています。

1年でドリフトが発生してしまうような低品質のPARセンサーは弊社では作っていませんから、1年以内でそういうリクエストを受けることはまずありません。再校正という段階で、そのセンサーは少なくとも2年、長くて10年は経過している状況でもあります。

有償という仕事になるにもかかわらず繰り返し依頼を受ける状況というのは、言い換えると包丁の研ぎなおしを継続し、何十年も使ってくれるお客様というイメージで解釈しています。簡単に言うと、うれしい案件。

今回はドリフトの経時変化ってどの程度生じているのかについて、再校正入荷時の値を基にお話します。前提として他社製品のことは話せません。弊社製の光センサーに限定してのお話です。

例1
2018年12月11日 出荷時校正係数 185.259 umol/mV
2021年04月15日 入荷点検時の校正係数 185.245 umol/mV
ドリフト (2.4年間) -0.0075%
ドリフト(1年間) -0.003%

注釈:ドリフトの計算は(185.245-185.259)/185.259*100=-0.0075%という計算式。
1年間の値は出荷時と入荷時の経過日数で1年に相当する値。

例2
2017年12月22日 出荷時校正係数 212.373 umol/mV
2021年04月15日 入荷点検時の校正係数 211.048 umol/mV
ドリフト (3.5年間) -0.624%
ドリフト(1年間) -0.17%

丁度先週入荷した校正依頼品が2個あったので、その値を公開していますが、過去に作業した数多くのセンサーも、破壊による修理という状態ではない場合には同程度のデータになります。例2のセンサーはちょっと大きめかなと思いますが、原因は拡散板の傷で別要因です。

大きな傷も無く、正常な状態での目安は<±0.5% at 5 years程度の範囲です。経験的な推測になりますが、上記の-0.624% at 3.5 yearsの個体はこの後1.5年ノーメンテだとしてもドリフトの変化が無い状態が続きます。なぜならドリフトの要因が内部的要因ではなく、外部的要因の拡散板の表面の傷が原因だからです。瞬間的トラブルだけど、寿命に影響が無いトラブルなので、このままなんです。

傷はどうしても屋外観測の場合はなんやかやの理由で現実としてはついてしまいます。若干の傷であれば例えば3mm程度の線状のへこみなどはよくあるパターンですが、弊社のセンサーの場合は傷の影響を受けにくくするためにあえて大きな拡散板としている(こういうのは傷と拡散板の面積比が影響のサイズです)ので、傷、磨耗などの影響が少ないからです。

ただし、傷の影響は年々大きくなっていくことは無く、ある程度傷ついたら、それはそれで、そのまま使っても再校正さえすれば問題はないです。拡散板の性能寄与分の役割はコサインコレクターでしかなく、傷程度ではコサイン特性は乱れません。こういう特性は拡散板の全体の形状で決まります。

話を戻して、作業に慣れた立場からのお話として、内部の乾燥剤の状態が悪くなければ、再校正する前から、だいたいこんなドリフトの範囲だろうなあという予想が付いています。

校正にやってきたセンサーは、ボトムマウントを外し、内部の乾燥剤の状態を確認します。ここで多くの場合は以下の写真のように、インジケーターがまだオレンジ色を保っている状態です。
IMG_20210415_180301492.jpg
写真は3.5年ものです。外観もそれなりにくたびれています。
IMG_20210415_180506455.jpg
オレンジ→薄いオレンジ→無色に近い→ちょっと青→くすんだ青色に変色していきます。変色が多ければそのセンサーはドリフト以外のトラブルを抱えている可能性が出てきますが、絶対そうかというとそうでもないときも多いです。例えば熱帯雨林に設置しているうセンサーは変色が早めですし、水中に設置しているものも同程度の変色の速度です。

再校正は全分解オーバーホールと同時施工することが多く、その場合は写真のように分解され、洗浄され、再校正という段取りを踏みます。
IMG_20210415_180626383.jpg

この内部確認の段階で水がジャブジャブ出てきたりしたときは、明らかに修理の方向ですし、ユーザーも送る前から「こりゃ修理だな。」とデータから判断して送っている段取りになります。そしてその修理はどこまでも修理できるように設計しています。

ここまでのお話の要点をまとめます。

○ EMJの光センサーは<±0.5% at 5 yearsの範囲でドリフトする。ただし、それが延々と大きくなっていくものではなく、その程度で安定してしまう。
○ もしドリフトが1%を超える状況であれば、それはドリフトではなく故障なので修理する。
○ EMJの光センサーはどこまでも修理可能なので、見た目で腐っていても捨てずに送れ。もっと言うと、拾ったとかもらったEMJの光センサーがあればメーカーで修理してお得に使え。

光センサーの歴史は古く、こういう経年劣化の話は論文でも良く見かけますが、多分ウチのセンサーのドリフトは桁違いに小さいほうだと認識しています。特にPARセンサーではなおさらで、1年で寿命を言い切っているケースも見ますしね。

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2021年03月24日

電気式デンドロメーターから得られたデータの解析

電気式デンドロメーターから得られたデータの解析

従来のメジャーを使った目視法では半年や1年に数回の目視確認で得たデータは多くて数個/年程度のデータです。だから少なくとも数年の観察をおこなってようやく解析ができることになります。成長が早かった時期や停滞しているのはいつごろだったのだろうとかを知ることはできず、解析というよりも記録という方向性になります。

一方で、電気式の場合は10分に1回とかのユーザー任意の間隔でデータが蓄積していきますから、例えば1年間、10分インターバルだと52560データ数/年を得ることができますから、それこそ解析に値する作業になります。そもそも植物個体1本に対してこれだけのデータを得られるパラメータは珍しい方です。

今回は1例として、木1本の炭素固定(Carbon Uptake)を計算してみます。

炭素固定の話は二酸化炭素フラックス(CO2 やメタンのFlux)の計測、渦相関法、オープンパス、クローズドパス法と言った音の響きが小難しそうな単語が使われる分野で、膨大な費用と労力を要求されますし、それはチームを組んで管理し、人生の一部の時間を消費したなと実感するくらいに大掛かりな仕事になります。得られる効果は大きく、機材を設置した一帯(例えば海洋表面とか森林とか田畑とか)の代表的なCO2 Fluxを定量化できる素晴らしさがあります。ただし、一帯の収支(そこがCO2を吸収したのか発生したのか)が定量化できたという結果を得られますが、それが何故そうなったのかという部分が解明とか研究と呼ばれている現象の本質の追求になってきます。だからこそ土壌呼吸をピンポイントで計測したり、樹液流速を多点で計測したり、葉の光合成速度を計測したり、樹皮の呼吸、根の呼吸、たまには蟻の呼吸と言った細かいところまで、フラックスタワー近辺でのFlux以外のパラメーターの計測(SinkとSourceもしくはそれぞれの速度の探求)をがんばっている人々がいるのです。言い換えると、気温の計測を行ったらそれはその変化を確認できるだけであって、変化の原因までは解らないというのと同じです。

面白いことに、本質の追求をがんばればがんばるほど、その努力というのは当事者以外の専門外の人からは理解され難くなります。この肌の感覚とか他者の視線というのは、新しいことを実行してみたことがある人は必ず経験する感性です。がんばった分だけ褒めて欲しいのに、なんで?という経験です。

話を戻して、ここではシラカシ1本の炭素固定に限定した計算例を示します。もちろんスケーリングして森全体ではどうだろうとかの計算も可能な話でもありますけど、ここでの計測対象は弊社の庭木なのでスケーリングまではしません。

幹のサイズと高さからその体積を計算し、各種係数を用いて演算します。

使用機材 MIJ-02 TypeII 幹周用ロータリー
MIJ-12 防水ロガー
対象 シラカシ
樹高 5mくらい
計測開始時の幹周 365846 um(マイクロメートル)、胸高にて計測
★容積密度 620(kg/m3)
★炭素含有率 50%
★拡大係数 1.23

★はこちらから引用しています。
https://www.ffpri.affrc.go.jp/research/dept/22climate/kyuushuuryou/documents/page1-2-per-a-tree.pdf
樹種、実測値から得られた貴重な係数です。ここでは根は無視して地上部分のみを評価対象とします。

装着の様子は
MIJ02-Dendrometer.png

デンドロの計測値1年分はこういうグラフになります。
Circumference(um)One Year.png
縦軸は幹周um、横軸は日時。

1年間の計測値というのは植物の種類に関係なく共通した特長として、成長しているときと停滞しているときに2分されます。春と夏が成長期でそれ以外は停滞します。福岡県福岡市のピンポイントでは5月中旬から8月後半あたりまでが該当することがわかりますね。

まさにフェノロジーのデータでもあり、LAI(Leaf Area Index)との相関も出るグラフの形です。落葉樹の場合は葉が仕事してないけど落葉まではしていないというタイムラグはあるでしょうか。

熱帯地域では年中成長しっぱなしなのですけど、日本を含めた中緯度ではこういうイメージで合ってます。
ここまで見ていただいただいて解ることは、メジャー目視式を使っている人向けの情報として、目視するタイミングは停滞期のほうが良く、秋以降〜春までに確認と言えます。夏よりは人にやさしいかな。

計測データと計算結果を掲載します。計算式はカラムに残しています。確認可能です。
Rotary type2 Seasonal Change.xlsx
成長期96日の期間
幹周の成長速度 267.1um/day
炭素固定の速度 36.1g/day

高さ5m程度、直径10cmくらいのシラカシは、1日36gの炭素(C)を固定できているという結果。日本では1人が年間9トンのCO2を排出しているらしいので、
9×1000*1000/365=1027g/day。
C/CO2=12/44
1027*12/44=280g/dayの炭素
36.1/280=12%

「成長期の普通サイズのシラカシ1本の地上部分の炭素固定速度は36g/dayであり、人間が1日に消費して出てくる炭素放出速度の12%を吸収している。」

言い換えると

「成長期の普通サイズのシラカシ9本は、人間が1日に消費して放出しているCO2を全部吸収している。ただし成長期は約100日間だけなので、バランスを取りたいならば30本/人は確保してね。」

と言えます。これは少ないのか多いのかなどの感想は置いといて、現実はこうだよという話です。

固定された炭素は永遠に固定されるはずも無く、ほっとくと死んで分解されて放出されますから、有効的に利用しなければならないねというドラマも続きます。

例えばこれが森林の中の1本の木だとすれば、森林を形成する樹木の数だけ掛け算すれば森林全体の炭素固定速度が計算でき、1年間の炭素固定量も計算できます。どのようなパラメーターでもいえることですが、全ての植生の計測を行うことは現実的ではないので、こういうスケーリングという掛け算によって算出することになります。もとろん統計的に有効なサンプル数を確保すべきなので、一つの森林に対して1本だけの計測値を元に算出するのは異議が出ます。有効サンプリング数と地形的な分布は考慮しなければなりません。めんどくさいですね。ただこういうことを計算すべく努力している人々は少ないけど確かに居るんです。身近には居ない希少種ですけど。

次に参考までに日変化を見てみましょう。
Circumference(um) Days.png
同じデータで横軸を短く取ったときのグラフです。解ることは

1 幹は毎日周期的に収縮を繰り返している。
2 その振幅は幹周として100umくらい。
3 縮小するのは日中の蒸散する時間帯
4 膨張するのは蒸散が終わったあとから次の日の蒸散開始まで
5 3は4に比べて速度が速い(傾きが急)

日変化は総じて、水の吸収と放出の結果を見ていることになりますから、蒸散速度(光合成速度)、水ポテンシャル、含水率との相関を研究したいときに用いるグラフになります。注意したいのは、成長期の成長速度の傾き、ここでは先の96日で得られた幹周の成長速度267.1um/dayを移動平均で差し引いた1日あたりの水起源の正味の伸縮(ロングタームの炭素固定の影響を差し引いた分)を有効とするべきです。

このようにデンドロメーターを使った植物の計測は、
1 長期間の計測では、1年周期の値は炭素固定や成長速度、成長期、停滞期の解析に使えるデータを得られる。
2 日変化分は水が植物に関与する影響を解析するデータを得られる。

と2つの解析が可能になります。

特徴的なのは、他のパラメーターの計測に比較して、電気をあまり食わずにオートマチックで得られるという部分です。この特徴の活かし方として植物が健康か否かの判定にも使えます。例えば1年目のデータと2年目のデータを比較すれば去年と比較して成長が遅い早いの評価ができますから、天然記念物の指定を受けた樹木や、もっと身近な街路樹などに装着しておけば、何か異変があったときのアラート、土壌改良などの効果の確認、ひいては真剣に取り組むと案外難しいと言われている死活管理さえも可能になります。死んでいたら年変位も日変化もしません。むしろ材木と呼んだほうが良い状態になり、材木は実は温度変化による変位がとても小さく(温度特性が小さい)、10-7/℃の桁だと言われています。ピカス、レジストグラフ、インパルスハンマーといった樹木診断の装置は、扱いがめんどくさかったり、高額だったり、破壊的だったりしますから、そもそも経時変化や履歴を見る手法としては適してなくて、今現在の状態を知るための装置です。

日変化を見ることでも同様に評価可能です。草本であればここで使った幹周用のロータリーではなく、LMSやLMMを使えばφ1.5mmサイズからの評価が可能になります。

ここまでの解析や計算でも植物の評価や研究に効果的なのは解ってます。しかし、もう少し貪欲になっても良いかなとも思えます。弊社にとっての今後の課題は、根用のデンドロメーターを開発する必要があると判断しています。幹だけで得られたデータは吸水と蒸散が同時なのか、異なる周期なのかの判別ができていません。水は多くの場合、土壌→根→幹→枝→葉という経路をたどります。(一部樹種では逆もあります。)

この辺の解明は蒸散速度(サップフロー)や水ポテンシャルの計測によって一部の研究者が展開していますけど、問題は手間がかかったり、うまく行かないことが多かったりする測定原理なところです。

人が増える要素も無く、予算を増やす気も無いどころか減らしたがっている今の日本ではかなり困難なお話に行き着くのは解ってはいますが、可能な範囲での解決案を今後も提案していきます。

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2021年03月12日

MIJ-02 Rotary Type3 Dendrometer 発売開始2021.03

MIJ-02 Rotary Type3 Dendrometer 発売開始2021.03

正体や原因が何にせよ、コロナ禍のせいでこうなったという話題が多い過去1年でした。一方で、コロナ禍のおかげでということも少々ありましたね。仕事とは関係ない個人的な部分で。時間のゆとりができる反面、心配事は増える、ところが心配しても仕方が無い漠然としたネタが多いというアンバランスな方向性だったかなと思います。修行が足らんな。

暇つぶしに学べたこともあり、MMTは面白かった。経済のカラクリやインチキ、欠陥も理解できるし、嘘を鵜呑みにしてきた反省もできました。エンジニアとしては全く考えてこなかったテーマだったけど、専門外って大事だなと思いました。

海外旅行に行けていた数年前の範囲でも、日本とそれ以外の国の雰囲気、文化の違いとかじゃなくって、「活気」の違いは大きく感じることばっかりで、帰国したその日は特に、活気が無いなこの国は、という気分にさせられていた理由は、経済成長率の違いだったようです。規模と言う絶対値よりもむしろ成長率のほうが重要で、言い換えると今日より明日のほうが良いと思っている人の割合が多い街単位での集合体の雰囲気です。

強引に本題に入ります。
デンドロメーターという機械は経済成長率の計測はできませんが、植物の成長率は計測できる装置です。

2016年終わりごろから4年間Type2を製造販売してきましたが、2021年3月Type3を発売開始します。Type2のユーザーから頂いてきた声を反映しています。例を記すと

1 ワイヤーの通し穴が小さい
2 締結ねじが小さいし、ネジを回しにくい場所にある
3 締結した後ワイヤーを再設定しようとしたらワイヤーの締結した部分がつぶれて曲がっている
4 初期テンションの掛け具合がよく解らない
5 固定に使うネジ2本で幹や樹皮を痛めたくない#
6 ワイヤー2mって多くの場合長すぎ
7 ケーブル5mって多くの場合長すぎ
8 設置から1年後以上経過したとき、データを確認しないとワイヤーのリセットを行うべきかどうかの判断ができない
9 長期設置後、幹の成長、肥大によってプーリーに干渉する#

もう少しあったような気がしますが忘れました。そりゃそうだろうという指摘もあるにはありますけど、改良できる部分はそうするべきです。

そこで、少なくとも上記の問題を解決したのがType3です。特に#は手ごわかった。
上記問題番号に対する対策

1 ワイヤーの通し穴が小さい
2 締結ねじが小さいし、ネジを回しにくい場所にある
3 締結した後ワイヤーを再設定しようとしたらワイヤーの締結した部分がつぶれて曲がっている
MIJ02T3FixWire1.jpg
MIJ02T3FixWire2.jpg
ワイヤー締結ネジを一般的なプラスネジ。
そもそもワイヤーを穴に通さなくても良い設計。
ネジ外周のワイヤーが90度巻かれる部分が0.5mm下がっており、ネジを目いっぱい締めこんでもワイヤーがつぶれない、しかし、締結は確実に行える設計。

4 初期テンションの掛け具合がよく解らない
MIJ02T3Slide1.jpgMIJ02T3Slide2.jpg
6角ボルト*2本を緩めるとポテンショとプーリーが30度動かせます。ボルトの相手のナットも動きます。
この30度でバネの初期テンションを与えるので、誰が設置しても同じテンションを掛けられます。
また、Type2と違いテンションを30度分かけても計測レンジが消費されません。

5 固定に使うネジ2本で幹や樹皮を痛めたくない#
MIJ02T3Belts.jpg
非破壊装着キットと呼んでいる2本のバネ付きベルト(オプション)を使えば対応可能。
本稿1番下の写真右がそれ、左は従来どおりにネジ2本で固定した様子。

6 ワイヤー2mって多くの場合長すぎ
ワイヤーの標準長さを1mに変更。
足したい長さだけ指定可能。

7 ケーブル5mって多くの場合長すぎ
コネクタ付きケーブル2mを標準に変更。
足したい長さだけ指定可能。

8 設置から1年後以上経過したとき、データを確認しないとワイヤーのリセットを行うべきかどうかの判断ができない
MIJ02T3Dot.jpg
プーリーに白丸ドットを刻印しました。
赤いケーブルとドットが鉛直方向に一致したときが計測の限界を示す。
ワイヤーのリセットのタイミングを計画できる。


9 長期設置後、幹の成長、肥大によってプーリーに干渉する#
MIJ02T3Arm1.jpgMIJ02T3Arm2.jpg
これはプーリーと幹の間に何かを設置する方向で対応しました。
アームと呼んでいるワイヤーロックや固定用ネジの穴が開いた部品を指します。
ネジ固定の場合、幹の成長をアームが部分的に邪魔するのでプーリーには幹が干渉できません。
非破壊装着キットを使う場合は、幹の成長に応じて必要な分だけデンドロ本体が半径外側方向に移動するためそもそもプーリーには干渉できません。

Dendrometer-MIJ02T3.jpg

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2021年02月05日

土壌の水ポテンシャルセンサー(アナログ出力の場合)

土壌の水ポテンシャルセンサー(アナログ出力の場合)

厄介なんです。水ポテンシャルって。
植物側の水の移動の駆動力って水ポテンシャルという値なんですが、その測定というのは実に厄介です。植物体は役割から、もしくは概観からの判断で分けると葉、枝、幹、根の4箇所もしくは枝+幹を1つと考えて3箇所に分割できます。全ての水ポテンシャルを計測できるのはサイクロメーター法による基本的には破壊&サンプリングによる計測、たまに非破壊で計測できる工夫をしたサイクロメーターがあります。破壊型は文字通りサンプルを破壊するので、あまり好まれないが仕方が無く使われることが多く、ただし、葉は沢山あるからいいじゃないということも言えるので、そのときはプレッシャーチャンバー法による計測を行ったりします。

非破壊のサイクロメーターは仕様に少し無理があって、うまく計測できるときはありますが、出来ないことも多い。この辺は経験者は良くわかっていただいていると思います。

植物の研究がメインの人でも、その環境要因の一つ、土壌水分は度々計測します。根に直接接触してますからね。このとき、本当は土壌の水ポテンシャルを計測したいのだけれどもメンテナンスが厄介だったり、計測レンジが狭かったり、メンテ不用で計測できる原理があってもそれでさえも、校正に手間がかかったり、価格が高かったり、ロガーと抱き合わせで販売したいメーカーの意向からデジタル出力だったりするので、汎用性が問題だったりします。そこで堆積含水率(VWC)の計測で我慢しておこうという意味で、土壌水分センサーと言えば体積含水率センサーのことを指すほど、世に出回っているというのが現代の状況です。

いまさらという単語が当てはまる手法として、石膏ブロック式の水ポテンシャルセンサーというのはまだ販売中です。石膏ブロックに水が浸透し、その水の濃度(水ポテンシャル)に応じて抵抗値が変化し、その抵抗値は水ポテンシャルにリニアな相関がある。という単純明快な原理を使ったこの方式の欠点は、温度依存性が高いということです。同じ水ポテンシャルの状態であっても温度が変化すると出力の見た目が温度計のように動いてしまうというやつです。

対策としては別途温度を計測し、その温度の値で水ポテンシャルセンサーの値に補正をかけるというのが一般的です。

いまさらのセンサーとしてWATERMARK社(米国)の紹介です。

WATERMARK 200SS-15
200SS.jpg
-15はケーブルの長さを示し、この場合は15インチ=4.5m程度という意味。

WATERMARK 200SS-VA
200SS-VA.jpg
抵抗値変化を電圧出力に変換するモジュール

WATERMARK 200TS Temp Sensor
200TS.jpg
温度計測を行うサーミスタ(係数が専用品)温度補正を行うための温度計であって、温度の計測が出来るというものではない。

このメーカーはユーザーの使いやすさとかをあんまり考えてないなあと思えるブツたちなのですが、
計測(観測)の実績も長年あるし、価格が高いわけでもない(水ポテンシャルセンサーとしてみたとき)とも思えるし、雑な作りだとは思うんですけど結構タフな作りとも解釈できるかな?という、このマーケットでも少し異質な感じがしつつも・・・という不思議な、しかし相変わらず昔のままの姿で製造を継続されてしまっているというところ。

写真を見て解るようにケーブルぶった切りのまんまで入荷しますから、接続を行うのはユーザーがやってね、という仕様です。

弊社でも長らくこの組み合わせで販売してきたのですけど、積極的になれない理由が、この組み立てをユーザーに、という部分でした。ところがついさっきなのですけど、メイドくさいけど組み立てをウチでやればいいじゃない、と思いついてしまったので、パッケージとして販売することにしました。

EMJ200SS
EMJ200SS1.jpg
温度補正した値がそのまま出力されるよ仕様

EMJ200SS2.jpg

EMJ200SS3.jpg

悲しいけど、どうやっても、どこまでも不恰好なセンサーですねえ。
普通に組み立てると石膏ブロックのケーブルと温度保証のケーブルが混在して、もっとマニアックな状態になりますが、ここではメッシュチューブを使うことでケーブルを1本になんとなく見せているというところがキモです。
現場ではこういう小技が使いやすさと堅牢性に効くのは確かです。

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2021年02月03日

牛方コンパスを汎用カメラ用三脚に固定する部品を市販化

牛方コンパスを汎用カメラ用三脚に固定する部品を市販化
しました。

この部品は妙に問い合わせが多く、それなりの数の方々に必要なことがわかりましたので、市販化しました。
2008年04月04日になんとなく情報公開した記事がこちら
http://emj.sblo.jp/article/13564690.html

製造方法は従来どおりで変更はなく、品質は弊社スタンダードに適合。
旋盤切削、黒アルマイト、材料はAl6061-T6。
三脚で使われている一般的なネジに対応したネジ穴が下部中央に
三脚の回り止め用のバカ穴も装備
オスネジは牛方コンパスのメスネジに対応
手回し部分のアヤメローレット加工
外径50mmで一般サイズの三脚のマウンター相手では違和感が無いサイズ
全高20mm、ローレット部肉厚10mm

USHI01.jpg

USHI02.jpg

1個あたり税込み6000円(レターパック送料込)
在庫はそこそこあります。

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2020年12月28日

土壌呼吸チャンバー

土壌呼吸チャンバー
(持ち運び用の設計)

2020年も終わりかけ。1999年創業のEMJはなんと21年が経過しましたが、振り返って今年は一番世間が混乱した時だったかなあと思います。ある意味従来とは違った進化を遂げた部分もあり、これまでの社会の欠陥か弱点を認識できたときでもあり、評価は見方によるけども、いずれにせよ皆様心が忙しかったと思います。

そういうときにdocomoの値下げ強要、みなさん旅行へ行ってね、買い物袋の有償化、という政府の誘導。何故今それをがんばる?と多くの人は思っています。とは言え値下げは単純にうれしいねと思ったらそれは間違いじゃないのかな。増税の財源を政府がdocomoから奪ったわけで、またなにかの税金が増える準備でしょう。5000円ほど安くなったみたいなので、5000円/月に相当する新しい税金が課される未来の下準備完了。2019年までの個人をターゲットにした増税ラッシュを経験したので、どこか投げやりな気持ちも含め、次回は建前上なんという名の税金(罰金)なのかなあ、ちょっと楽しみ。

土壌呼吸チャンバーというのはgoogleで検索すると4万件ほどがヒットします。決してメジャーと言うものじゃないけど、それなりに自然科学では取り組まれてきている物体。土壌表面からどの程度の速度でCO2が発生、放散されているかを調べる道具です。様々な会社から出ているようなものでもなくて、研究者自作だったり、EMJのような特注が得意な会社に依頼が来るか、そういうシロモノです。

注意するポイントは、密閉できること。内部攪拌できること。
手を抜いていいポイントは、超高精度って分析計を使わなくても構わない。むしろ邪魔。直線性だけ保っていればそれで良いこと。

後者の理由は簡単で、とあるポンコツ温度計がおよそ10度ずれていたとして、それを使った計測はおよそ10度ずれるわけです。A. 20度の物体を計測すると30度を示す、B. 10度の物体を計測すると20度を示す。このポンコツであってもAとBの温度差だけは正確に計測できるわけです。これが直線性という概念です。

土壌呼吸によって土壌呼吸チャンバー内部のCO2は時間とともに上昇するばっかりなので、正確な絶対値がわからなくても直線性が保たれていれば、かつ、計測に要する最長数分間の間の直線性が確保できていればそれでいいんです。なので再現性も時間の制約が付いていて構わない。ついでに、分解能も数ppmあればそれで良し。そのくらい一般的な土壌ではCO2をばしばし出しているということでもあります。(極低温時はそうでもないけど、には注意。)
これまでに沢山のタイプの土壌呼吸チャンバーを製作してきましたが公開したことは無かったような。高さ3mのやつとか、現場組み立て、修理可能なやつとか。だからここオーソドックスなものを公開します。過去の色々な反省をフィードバックしてブラッシュアップが終わったほぼほぼ完成形です。

仕様
軽いと思える範囲で持ち運びができる。
単純な構造で壊れ難い。
時間差をもって、繰り返し同じ場所で計測するので場所の再現性を得る。

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仕様部材
チャンバー/EMJ SChamber
CO2/GMP343
温湿度センサー/HD9009TRR
PAR/MIJ-14PAR Type2/K2
土壌温度計/熱電対シース入り
データロガー/THRMIC

ここで使ったGMP343はお客様持込でした。今作るならGMP252が良いと思います。
場所の再現性について、ここは正直奇策です。写真の中にビューレットが見えますがそれも使います。
排水マス用のアジャスターを流用。アジャスターを現場に設置したままにしておき、計測したいときにチャンバーを被せ、溝に水を貯める。
http://www.lyprone.com/exterior/17/
JOTOさんありがとう。という気持ちです。どこでも購入できて、安価で、頑丈で。
さらに、様々な直径と深さが購入可能。もう言うことなしです。
写真のチャンバーはφ300で製作してますが200くらいまでは実用的な範囲です。

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2020年11月02日

誰でもできる熱電対コネクターの付け方

誰でもできる熱電対コネクターの付け方

熱電対は便利で安価で温度を計測するにはとても都合がよい素材です。とは言え製作を業者に依頼すると、当然ながらかかった時間だけの請求が来ますからそれなりの金額になります。今日は予算は無いけど温度をいっぱい測りたい方向けの講習です。

屋外環境関係で計測する温度レンジは-20〜60℃の範囲で十分なのですが、その観点からの判断と材料の入手性を考慮すればT型かK型が良く使われるマーケットになります。特にT型は多く使われていますね。

更に温度を計測する場合は複数の対象が離れていることが多く、それゆえに熱電対が長すぎて現場でのハンドリングが悪いという状況に陥りがちです。対策としては熱電対用コネクタを装備すれば、ロガーとの脱着が簡単になります。また、現場で断線などのトラブルが生じても、コネクタ付きのスペアを準備しておけば交換が容易で、現場仕事の時間を短縮できます。

多くの場合この段階でふと気が付くのですが、熱電対のコネクタの付け方というのがネットでもあまり見かけないのです。あっても写真さえない不親切なことが多いのでこの講習というお話です。
IMG_20200916_172347080.jpg
熱電対の型に応じたコネクタを購入したらこういう物体が届きます。写真ではカバーは外してます。T型の場合は線の色で判別が容易なので、銅色してるもの同士をつなぐことは明白なのですけど、この1mmも無い穴が開いた白いゴムや四角いワッシャーはどうしたものか、、、ですね。このコネクタの端子は銅色は銅製、銀色はコンスタンタン製になってます。あとスタンダードサイズよりもミニチュアサイズのほうがお勧めです。熱電対の場合は大きいメリットが特に無く、ミニチュアのほうが安価だと一般的に言えるからです。

1 コネクタに接続したい側の茶色のシースをニッパーで剥きます。更に白と赤のシースも剥きます。この作業は慣れると茶+白+赤を一気に剥くことができるようになります。10〜15mm程度で十分です。
2 白いゴムに太目のピンセット閉じたままで通します。
IMG_20200916_172535761_MP.jpg
3 適度な幅を持つマイナスドライバーを使い、ピンセットを開きます。このときあまりにも開きすぎるとゴムが切れますからほどほどに、ただし、このゴムは結構頑丈なのでよほど開かない限りは切れません。
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4 開いたところに熱電対の先端を通します。20〜30mmも通しておけばよいでしょう。
IMG_20200916_172703578_HDR.jpg

IMG_20200916_172716253_MP.jpg
5 軸の径が2〜3mm程度のドライバーを使って写真の向きの場合、銅は反時計回り、コンスタンタンは時計回りに丸く加工します。ほぼ根元から丸くなっていることに注意しましょう。
IMG_20200916_172844603_MP.jpg
6 コネクタの白ゴムが収まる場所と端子固定ネジの位置関係を確認します。結構な短距離だなというところが重要で、5で加工した丸をほぼほぼ根元から丸くしている理由はこれです。「ねじを回す方向に電線を巻く」と覚えましょう。次に白ゴムの位置合わせのために仮置きして確認しましょう。おおよそ合っていればいい程度ですが、勘所としては写真のように茶色のシースがほぼ上限に来るところまでを気にしてください。
IMG_20200916_173215075_MP.jpg
7 ネジを外し、四角のワッシャーと端子の間に丸部を挟みます。そしてねじを締める。このときネジと丸部は直接絡んではないもののネジを締めると丸部が引きづられます。丸部の曲げ加工に方向性を指定したのはこのためです。逆向きに丸めると電線が緩むことが多いので、ここは重要です。
IMG_20200916_173301581_MP.jpg
8 あとは成り行きで元の通りに組み立てていけば完成です。
IMG_20200916_173553709.jpg
今回はコネクタ部分の組み立て方を記載しました。熱電対は異種金属が接触している部分が起電力を発生する(ただし、零接点を基準として)というものなので先端の接触をどうするかが肝になりますから、それはまた後日。

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2020年10月27日

EMJがデンドロメーターの開発に時間をかけている理由

EMJがデンドロメーターの開発に時間をかけている理由

弊社では2020年2月からデンドロメーターに力を入れ、その種類を増やしています。わかっている人は何も言わなくてもそのメリット、デメリットを把握してらっしゃいますが、
ただ、普通はそんなことは解りようがありません。今日はこの部分を説明します。

まず、植物に関係するパラメーター(数字に置き換えられる物理量)は沢山ありますが、その代表的なものを特徴と一緒にまとめました。

No. Parameter
1 光合成速度 Photosynthesis rate
2 蒸散速度 Transpiration rate   
3 樹液流速 Sap Flow  
4 葉温度もしくは飽差 Leaf Temp. Humidity Deficit
5 水ポテンシャル Water Potential
6 成長速度 Plant Scale or Grow
7 蛍光反応 Fluorescent
         
8 光量子 Phtosynthetic Photon Flux Density
9 相対湿度もしくは飽差 Relative Humidity or Humidity Deficit
10 大気温度 Air Temp.
11 土壌水分 Soil Water Contents
12 土壌温度 Soil Temp.
13 土壌酸素 Soil Oxygen
14 土壌の電気伝導度 Soil EC
Plantsparameters.png

7と8の間にブランクを入れた意味は、植物からの直接的なパラメータと、環境要因のパラメータに分類したという区分けです。

環境要因って、つまりは植物が生育しているその環境のことです。大企業が農業IoTと関連付けてはしゃいで計測しがちなパラメータが後者です。なぜそんなことになるかと言うと、電子部品扱いのセンサーとして入手性が良く、価格が安いからそれを使った機材は利益が大きくなるという製造開発者側の都合のみで選定されているからで、決してユーザーの視点ではありません。例外的に植物工場でコントロールできるのは環境要因しかないので、その場合は計測する意味がありますし、むしろ重要だといえます。

それらを計測しても環境の状態が把握できるだけで、植物そのものの状態を把握することは無理です。例えると、医者が患者の体を全く診察せずに、患者の生活環境を調査することで病気の原因を探っているという状況です。何か原因が解ることもあるだろうけど、先にもっと診ることがありますよね。直接的なパラメータをまずは診るべきなんです。

では分類の中で直接的パラメータだけを見ましょう。本当はこれらのパラメータが自動で、消費電力が少なく計測できれば一番なのですが、そういうわけにも行かない現段階。自動じゃなくても根性で手動計測の頻度を上げればいいモンね、という考え方ももちろんありですけど、現実的ではないんです。ほとんどの場合電力を要求する機材なので、充電、メンテも必要になるからです。努力の結果、学会発表や論文なんかでグラフを見ると「疎」なグラフがほとんどですね。疎だと何がいけないのかと言われれば、解析がしにくい、しやすいという違いが出てきます。環境要因などと関連付け、相関を解析することになってきたとき、10分に1回のパラメーターと、2時間に1回のパラメータの間かつ夜間はお休みというそれの比較では、有効な値の数が圧倒的多数になってきます。

Auto MeasurementとLow Power Consumptionにて○が無いものは計測が厄介なことを示します。自動計測が出来ず、消費電力が大きければ両方に○がありません。この内両方に○が付くパラメータは、Leaf Temp. Humidity Deficit (葉温度もしくは飽差)、Plant Scale or Grow (成長速度)の2つです。

これが弊社がしつこくデンドロメーターを開発し続けている理由です。電力の準備が難しい屋外で、自動計測ができる直接的なパラメータは少なく、その中で弊社がこっちの方が面白そうと思うものを優先した結果です。

もう1つの理由として、驚くことに植物の研究ではこの成長速度というパラメータに着目せずに進んできた経緯があり、それをなんとかしようという目論見です。そういうモノがなかったのでという理由もあります。目視型のデンドロメーターで0.1mm分解能で毎年1回の計測を数年実施とかはあるんですが、それでは季節変化や日変化の確認はできません。直径の日変化のスケールは20μm程度の範囲なので、それは0.1mm刻みの分解能の20/1000*0.1=1/500・・・・見えません。電気的デンドロメーターでははっきり見える範囲ですが比較してもねえ・・・肉眼と顕微鏡の比較のようなもので比較しても意味がないです。

デメリットについて、デンドロメーターで計測した値は、長期トレンドと短期トレンドの両方を含む値しか確認が出来ません。前者は例えば1年間の成長の履歴を指し、それは春夏は肥大、秋冬は停滞という特徴を持ちます。後者は日中午前は収縮、午後は定常、日没から翌日の日の出までは肥大というサイクルを示します。
人間で言うところの脈拍のイメージです。ただし、雨天時、曇天時は不整脈や心停止したりします。
Quercus-Myrsinifolia-Stem.png

計測した値は「長期肥大成長 + 水による日々の脈拍」になるので、例えば日変化のみが必要であれば年変化を関数にし、それを長期トレンドとして計測値から引き算すると日変化が見えるという解析が必要になります。そうすればいいだけなのでデメリットといえるかどうか、ただ初心者には注意事項であることは確かです。

実は電気式デンドロメーターの醍醐味は年変化より日変化です。分解能が0.1μmというエリアになってくると1日のフルスケール20μmの1/200が見えてきます。その駆動力は導管の脈拍です。さらにその駆動力は根からの吸水、葉からの蒸散によって生じるミクロな動きになりますし、それは日々繰り返される植物生理の1つの現象です。先の表にまとめているように直接的なパラメーターが見ている根本的な物質は水であり、総じて、植物の直接的パラメーターとは水の動きなのです。二酸化炭素も吸収しますけど、それは光合成で水と同じ周期で変化しますから、水とCO2には相関が出ます。

人って掛けた金額に相当する見返りを期待します。高いものは価値があり、安いものは価値がないというものさしです。社会ではそういう面もありますけど、自然や植物ってのは人が作ったそういう付加価値に関するものさしは全く認識していません。表にまとめた1〜7番はどれも高額で中には数千万かかるものも含まれています。じゃあ高いものほど良い結果を生むのかと言えば、そういうことは全くありません。価格の高低に関わらず、全てのパラメータは対等な価値を持ち、自動連続観測できるものは更に実用的という別の価値が加わります。

弊社の開発や改良というのは終わりが無いので、当分の間はモデルが増えたり、勝手に改良したりということが継続するとは思いますが、最初に単品特注品として着手したのは15年ほど昔、再着手したのが2016年頃、それから断続的とは言え継続してますから累積年数ではなかなか長いことやってるなと思います。

2016年以降の設計思想は、なるべく単純、無駄を省く、分解能を上げるの3つで進めてきました。その結果として販売台数が妙に増え、それが理由で部品コストが勝手に下がり、2020年の10月から大幅な値下げが可能になりました。この値下げは弊社の努力は皆無で、これまでのお客様が沢山買ってくれた成果です。そういうことで、多くの方にとって検討いただくには良い時期に入ったと言えます。

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2020年09月14日

LAI (Leaf Area Index・葉面積指数)の観測は基本的には恒常設置型センサーを使いましょう

LAI (Leaf Area Index・葉面積指数)の観測は基本的には恒常設置型センサーを使いましょう

弊社ではMIJ-15LAI TypeII/K2 Leaf Area Index Sensorという現場置きっぱなしでLeaf Area Index葉面積指数の季節変化を計測するセンサーを製造販売していますが、その一方で、MIJ-15LAI/P Portable Leaf Area Index Meterも製造販売しています。この2機種の用途の違いがとっても解り難いとの声が聞こえてくるので、ここでついでに解説すると同時に表題のお話をします。

MIJ-15LAI TypeII/K2 Leaf Area Index Sensor
これは5mケーブルを装備したセンサー単体での販売品です。別途データロガーと組み合わせて使います。センサーそのものは長期ドリフトがすっごく小さいことと堅牢性で定評があるMIJ-14シリーズと同じですから、屋外に恒常設置、かつ無人で運用する目的の製品です。この設計は実績として、事故で破壊さえしなければ±0.1%未満/3年のドリフトです。(なぜ±なのかは話がそれ過ぎるのでまた今度。)
https://environment.co.jp/leaf-area-index-meter-lai
Leaf Area Index Sensor MIJ-15LAI TypeIIK2.png

K2は1年ほど放置した後、得られたデータを描画するとLAIの季節変化を確認できるものです。一番の特徴はまさにここで、放置したままでLAIの季節変化を計測できるものは、世界でこの製品しか存在しないと言える唯一無二のセンサーで、LAIセンサーと呼べるものもこれしかないです。他はSensorではなく人間が操作することを要求するAnalyzerもしくはMeterです。

歴史的にLAIは手動で計測するという機材しか存在してこなかったので、教育的(教科書的)にも、直感的にもこの特徴が伝わりにくい事が、お客様とお話していて感じることが多くあります。それも仕方が無いことで、現在でも状況は変わらずといったところです。海外製品と比較検討されることが多いのですが、この点が全く異なっているので、言葉にはしませんが、比較してもねえ・・・と思いつつ対応しています。

LAI葉面積指数というパラメータは植物群落を葉の存在密度で評価しようというもので、地面に1m×1mの正方形を計量し、その上空にある全ての葉を刈り取り、全ての面積を合計したとき、例えば3m2だとしたとき、LAI=3となります。では、どういう要因でLAIが変化するかと考えると、成長による葉の枚数の増加、葉の面積の増加がLAIの増加要因、落葉、紅葉、立ち枯れ、倒木が減少要因と考えられます。

つまりゆっくりと変化するパラメータといえます。この「ゆっくり」が観測者にとっては厄介で、手動で計測するときは時間的にも労力的にも膨大な仕事をせねばなりません。暑いときにも寒いときにもそれをなんとかこなして得たデータをグラフに描画すれば、どう見ても激しく疎でがっかりなグラフになることはやる前からわかっちゃいるけど、やっぱりこうなるねえ。というオチが付きます。

多くのLAI計測器では樹冠下での光の強度と、樹冠外での光の強度を同時計測して得られた比がLAIに相関があることを測定原理としています。そのため、どうしても枝、幹の成長が光をさえぎる効果はそのまま測定値に影響します。また紅葉する樹種ではクロロフィルが抜けた葉も光をさえぎるため、つまり枯れた葉もLAIとしてカウントしてしまうことも回避できません。もちろん人工的な構造物で光を遮る物体までもLAIとしてカウントします。

一方でMIJ-15LAIにおいては葉に含まれるクロロフィル(緑色の成分)の近赤外光とPAR (Photosynthetic active radiation) の分光透過率の比がLAIに相関があることを測定原理としていますから、クロロフィルが抜けた枯葉、枝、幹、電線や電柱などの人工物も含めてカウントしません。

MIJ-15LAI/P Portable Leaf Area Index Meter
この分析計は先の/K2型にハンドヘルドリーダーを装備した機種です。持ち運んで人力でLAIを計測することを目的にパッケージされた製品です。使い方としては他の多くのLAI分析計と同様で、様々な場所を任意のタイミングで計測できます。等と良いように表現することは可能ですが、逆に表現すればMIJ-15LAI TypeII/K2が持つ上記した良さを捨ててしまっているパッケージとも言えます。
https://environment.co.jp/lai-leaf-area-index-analyzer
Leaf area index (LAI) analyzer MIJ-15 LAIP.jpg
Leaf Area Index Sensor MIJ-15LAI TypeIIP2.jpg

ただし、LAIというパラメータはゆっくりな変化であることは既知なので、通常は集中観測したい群落に恒常設置して連続観測を行い、たまにそこから持ち運んで、他の植生を調査するという組み合わせ技は有効だと考えられます。MIJ-15LAI/Pのハンドヘルドリーダーはインターバル測定の設定も可能ですから、そういう使い方を提案しておきます。

総じて、植物の葉の生長と衰退は人間が活動する時間周期よりもかなり長い時間をかけて動いていくものなので、周期的にどうにも相性が悪いと言え、その問題を解決すべく開発したのがMIJ-15LAIシリーズですよという解説でした。

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2020年05月14日

MIJ-12防水計測システム with RTR-505 (無線通信がしたいわけです)

MIJ-12防水計測システム with RTR-505(無線通信がしたいわけです)

今回は弊社のロングセラーと言えるほど、長らく作り続けている1chデータロガーパッケージMIJ-12とT&DのロガーRTR-505を使ったセミカスタマイズになります。中継器の選択次第で、RTR-500NW(有線LAN)、RTR-500AW(無線LAN)、RTR-500MBS-A(携帯電話回線、ただし3G)の3パターンの無線通信が可能になるモデルです。
RTR-505で無線通信をする場合はRTR-505-VLという巨大なリチウム電池を内蔵したモデルを選定しますのでケースはそこそこのサイズのものを使います。今回はペリカン1120に収納します。

このロガーは使ってみると結局は簡単だと言えるのですが、最初は戸惑うことが多いかなあと思います。
設定方法が少々めんどくさいクセがありますね。ここでは設定方法はRTR-505マニュアルに任せるとして、実際の配線作業についての記します。電源を要求しないセンサーの場合は簡単なので、電源を要求するセンサーを駆動させる場合の解説にします。

土壌水分センサーSM150TをRTR-505のプレヒート端子でオンオフ制御するのですが、その中継にPRH01基板を用い、乾燥剤と一緒にペリカン社1120防水ケースに投入、ケースの側面にはケーブルグラントを装着することで気密を保つという手法です。

まずは完成品
DSC02677.JPG

内部の様子
DSC02679.JPG

ケーブルグラントの様子
DSC02678.JPG

最初にPRH01とRTR505の電圧入力ケーブルを接続するためのケーブルを手作りします。
DSC02685.JPG
全長160mm程度が今回は丁度良いです。片側には棒端子TE0.5-8を装着し、もう片方は10mm皮膜を剥き、ハンダメッキを施します。電圧入力ケーブルの端子台はあまり太いと入らないというか細くないと入らないクセがあるのでメッキは薄付けが良く、ダマにならないように注意しましょう。そのためにはフラックスを使うと流動性が高くて便利です。

電圧入力端子VIM-3010とPRH01との配線
DSC02682.JPG
Input IN / センサーの電圧出力(信号) / 青
Input COM / センサーの電圧出力グランド / 黒
Preheat Out / PRH01のプレヒートグランドへ / 白
Preheat In / PRH01のプレヒート+へ / 白

PRH01と配線
DSC02681.jpg
ここは写真で見たとおりです。

PRH01とSM150Tの配線
DSC02680.jpg
今回は解りやすいようにSM150Tのケーブルの色とあわせた色にしています。

RTR-505の設定は以下の画像どおりにします。
RTR505VL設定.png
プレヒート1秒を忘れずに設定しましょう。

無線通信の場合は以下のように子機登録を行います。ここでは26個ですね。
RTR505VL数量26登録状況.png

以上で完成します。めんどくさいだけで難しさはそこまではない作業です。
注意点としてはバルクヘッドにケーブルグラントを装着するときはバカネジではなく、きちんとネジ穴を作りましょう。ペリカン社のケースはリリーフバルブが装備されていますが、こういう用途では湿気が進入するだけなので、バルブの穴は接着剤などで埋めておきましょう。あと乾燥剤はとても重要です。
開閉しない場合は6ヶ月に一回交換の交換頻度を守りましょう。

日本環境計測国産部門担当HK
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