2012年01月21日

樹冠下での光量子フラックス、PARの測定に関する相対的なノイズ、オーバーオールでの分解能

樹冠下での光量子フラックス、PARの測定に関する相対的なノイズ、オーバーオールでの分解能

知ってる人は知ってるんですが、このところ、国内某プロジェクトの一環にて、PARセンサーのイイのを作るぜって話があり、良し乗った、って事で、えらい時間をかけておりました。世界最後発の弊社は、末席ですから、もちろん手弁当です。出来上がったのは「MIJ-14PAR弍型」です。
http://www.environment.co.jp/study/MIJ-14Ver2.1CatalogManual.pdf

今回は、開発に関するお話の一部です。

シンプルな機械ほど、一つの部品が果たす役割が大きく、素材の吟味、試行錯誤による形状決定など、仕込みに時間がかかります。料理と同じなのかなあと想像しますが、僕は料理はしないので、はっきりは言えません。PARセンサーの開発話は、一気に書くと本ができそう(関係する人物たちの個性も含めると尚更。)なので、まずは電気的な部分の、更に、センサーのS/N向上策、その結果が出す計測の分解能に絞ってお話します。

一般的なPARセンサーの光電関係の内部構成は、SiやGaAsPなどフォトダイオード(以下PD)を検出器とし、その出力となる数十nA単位の電流を数百Ωの抵抗器でIV変換し、2000μE受光時に10mV弱の電圧になるように調整されています。

10mVという数値は、PDの特性から制約を受けた経験値で、上限です。なんも考えなかったら、抵抗器をもっと大きなものに変更することで、大きな電圧を得ようと考えますよね?だって、その方が、ロガーに繋いだ時に実際の分解能が上がるから。

でも、それをやってしまうと出力の直線性が得られず、上の方でサチッてしまいます。そこで、経験的に20mV程度までが限界であるわけです。で、安全を見ると10mVにセッティングしようと、作る側はそう思うわけです。

この理由でユーザーフレンドリーな、もしくはフールプルーフを考えたPDベースの光センサーでは、抵抗を内蔵してしまって、ユーザーにその辺を触らせないようにしていたり、ケーブルエンドに抵抗を装着していても、熱収縮チューブなんかで触れないようにしています。あまりフレンドリーでない場合にはモロに電流出力だったりしますので、この場合は繋ぐ抵抗値は気を付けて下さいね。

その制約を受けたセンサーを、よく使われる10〜13bit分解能のデータロガーに接続して使うとどうでしょう。10bit=1024、13bit=8192分解ですから、±20mVスケールに設定すれば、7.8μE、0.97μEの分解能になります。

さて、日中でもとっても暗い樹冠下で、ピークが20μE程度を想定すれば、10bitは使い物にならない。13bitでやっと使える。14bit(0.488μE)は必要だと、そういうことになってしまうのが、計測する前から判明する問題です。ロガーが搭載するADコンバータの性能ではなく、ロガー全体での実効値です。

一方、PDの暗信号を考えると、先の抵抗によるIV変換後の値で、±0.005mV程度が代表的であり、これは±1μEに相当する為、普通のPARセンサーを使う限り、ココが限界となります。実際は±5μEのノイズが乗るセンサーもあります。

結局、抵抗器を用いたIV変換を行う限り、樹冠下でのS/Nが良いPARセンサーを作ることは困難です。なぜかというと、例えばですね、フルスケールで論じると、ノイズが占める割合は±0.005/10=±0.05%という数値になるのですが、樹冠下ではフルスケールがその20/2000つまり、1/100になり、しかし、ノイズは同じ、結局5%ものノイズとという事になります。かつ、先のdigitの問題を考えれば、これまた5%刻みに相当するわけで、樹冠下で20段階評価のデータにしかならない。これでイイというユーザーが居るかと言えば、たまに居ますが、大概そうは判断しません。全天下での計測ならば、何を使ってもこの点は問題はないんです。しかし、そもそも全天下でPARの計測なんて意味がどれほどあるのか?という疑問や意見は、とても同意でき、そんなのは日射計を置いておけばいいんです。PARセンサーを使う前提では、勝負所は樹冠下でしょう。少なくとも解析して考えて、論文書く前提ならば。

今回、PARセンサーに専用設計のオートゼロアンプを搭載する事で、センサーそのもののノイズレベルは±0.01mV = ±0.01μE(製品保証値±0.05μE。ここは供給する電源がクリーンか否かが効きます。電池が最強です。)、出力は2000mV at 2000μEを達成しました。このS/Nであれば、センサーのノイズがデータロガーのそれを上回りますので、ノイズと分解能はロガー依存になります。
つまり、素直に配線した場合、±5Vレンジ、10bitで9.76μE、14bitで0.61μEの分解能まで。しかし、ちょっとした工夫で樹冠下用セッティングと言いますか、そういう事が可能になります。

複数入力を持つロガーに対して、センサーの出力を2分岐し、1方を±5Vレンジへ、1方を±20mVレンジに設定した入力へ接続しますと、前者は先に記載した分解能で、後者は10bitで0.039μE、14bitで0.002μEの分解能を得られ、14bitはオーバースペックとなります。総じて10bitでも十分となります。この場合±20mVレンジ側のデータは、20μEを越えたときにレンジオーバーで計測不能になりますが、そのときのデータは±5Vレンジのログを読めばいいわけです。ロガーのオートレンジが賢く動いてくれれば良いだけのことですが、現実的にはあまり賢いのが無いので、こういう方法もありというお話でした。
詳細は、上でリンクしたpdfの7ページに記載してます。

なんだか、わかりにくいなあと感じられる場合、高級オーディオの考え方と同じでして、音のひずみを少なくしようとすると、単独プリアンプが付いているのが良いなあと言う考え方と同じだと解釈して下さい。今どきはそのほうが解りにくかったりするかなあ。

日本環境計測国産部門担当HK
http://www.environment.co.jp/
posted by EMJ-TM at 12:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記