2012年02月24日

<続> 光センサの拡散板と遮光リングの相互的な位置関係、形状及び材質、入射角特性に関するお話

<続> 光センサの拡散板と遮光リングの相互的な位置関係、形状及び材質、入射角特性に関するお話

前回、拡散板の形状を確定するまでのお話で、フルフラット、つまり筐体のエッジとレベルが一緒というのが最悪な特性を持つと言うこと、その補正を目的として、エッジ面からの突き出し量を調整して追い込めるが、その際、拡散板の形状は平板でも球面でも大した違いは無く、どっちでも好きな形状を選べば良い、一方、その補正が可能な範囲は80度迄が限界だと、そして、それが理由でもう一言付け加えると、一般的に各メーカーが80度までの入射角特性データしか公開しない、その理由がココにあると、そういう事までがはっきり解りました段階です。

今回は入射角80度以上の特性の補正です。前回のグラフで縦軸の数字を見ていただければ解るのですが、±50%レンジで振り切ってます。これは論外な数値です。また、80度未満で理想を追うと、80度越えのレンジではプラス方向、つまり過大評価になってしまう傾向が見える。そりゃあそうです。フルフラットで過小評価する分を過大評価に持ち込んだ訳ですから、お釣りがどこかにでてしまう。今回はココをクリアするお話。遮光リングの出番です。遮光リングと呼ぶのか呼ばないのかは、良く知らないのですが、勝手に命名してます。

ここまでで、日射計には遮光リングが付いてない理由を理解いただけたと思います。フルフラットの黒体では反射が極小なので、過小評価にならないからです。もし、熱型で付いてるのがあれば、そんなセンサーは買ってはいけません。逆に遮光リングが付いていない光電タイプの拡散板付きセンサーも、その辺を考えてないか、コストと妥協したかのどちらかと言えます。

早速遮光リング付きと無しの比較データをご覧下さい。
DiffwRing.jpg

Y1軸が前回同様のエラー%、Y2軸がIDEALなコサイン特性にどの程度追従出来ているかを示します。

結果、遮光リングを装着すると、無限大に大きくなる80°以上の範囲での過大評価方向のエラーを抑制する方向に働き、同時に過小評価が最大20%出ていることも意味しています。で、現状の僕にはココまで、アイデア尽きたと言う段階で、結果という次第です。遮光リングに変形ギザギザを刻んで80-90度範囲をもっと突き詰める手法も考えましたが、切削費用が嵩むのが一つの理由、もう一つは遮光リングの別の役割を有効にしたかった、この2つの理由でココまでで止めました。樹冠内部でよく使われるPARセンサーを考えたとき、あちこちからやってくる反射光の影響を抑制するという役割も無視できないと判断しました。

余談ですが、Y2軸を見たときに、エラーが増える80度以上において、IDEALも、実測値もどちらも出力が当然ながら1/10に落ちています。こういうテストを実施するときの装置の光源は、なるべく遠方から時間的に安定した直線光を回転台に乗ったセンサーに照射するのですが、こういう光はあまり明るくできず、角度が増す毎にSNが悪くなるという問題が出ます。前々回でお話ししたSNのお話と同じ。各メーカーが80度までしか公開しないもう一つの理由として、シグナルがあまりに弱くなり、計測限界付近だったという事情もあるかも知れません。その点ではMIJ-14弐型シリーズはとっても楽でした。

同時に思ったのは、光関係の論文で、あらゆる問題をクリアできる魔法の呪文か?と思えるように登場するソーラーシミュレーターって機械の、一級品と呼ばれるレベルのを弊社も持ってはいますけど、この類のテストには全く用を成しません。放電型の光源は、実は、時間的に安定した光を得る事に対して、苦手としています。買う前に誰か正直に言って欲しかった。

放電なわけですからそりゃあそうでしょうと、今なら言えます。波長スペクトルの分布を太陽光に近づけたという意味では素晴らしい機材ですけど、応答速度が速いセンサーでこういう使い方をする場合には、特にアラが目立ちます。熱型であれば、100%応答に60秒程度は要し、アラが見えにくいので、逆になおさら注意でしょう。

このテスト以来、ソーラーシミュレーターって単語が論文に出てきて、かつ、キャリブレーション、テスト、入射角、なんかの単語と一緒に並んでいたら、疑問の目で見てしまう癖が付いてしまいました。いまどきそんないい加減な報告なんかは、上がってきてもリジェクトされると思いますけどね。

日本環境計測国産部門担当HK
http://www.environment.co.jp/


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2012年02月22日

光センサの拡散板と遮光リングの相互的な位置関係、形状及び材質、入射角特性に関するお話

光センサの拡散板と遮光リングの相互的な位置関係、形状及び材質、入射角特性に関するお話

備忘録にもなってしまうのはメリットだなあと思いつつ、忘れても困らない案件ばっかりの年度末は、なんの価値もない事が頭を占める季節です。寒いし。

前回に続き、また光センサーのお話の小出しです。拡散板という単語でピンとくる方は、それだけで、あらゆるジャンルにおいて、マニアかもしれません。だいたい男の趣味に使われることが多い単語で、カメラ他の光学機器、照明器具、バックライト付きのディスプレイなど、まあ、だいたい色で表現すると黒物の世界でよく使われる部品。要するに、光を拡散する板です。で、だいたい白い色したものが多いです。

何故白かというと、白は可視光を反射し、吸収しない性質を持ち、それゆえ、可視光範囲での拡散板の定番は白になってしまいます。板の中を光が透過する際に多重反射を沢山起こして欲しくて、そうすると、黒じゃ無いなあというイメージはつかめると思います。なので、白だと理解しましょう。

光のセンサー類で拡散板を使うのは、光電素子を利用した機材に限られ、熱型のサーモパイルなどでは、まず使うことがありません。実は、ココが設計上とてつもなく、相違なんです。

日射計でよく使われるサーモパイルの場合、熱が伝われば応答しますので、光を効率良く熱に変換する事が肝要で、かつ早く応答しなければならないという話になります。そうすると、熱容量を小さくして、吸収しやすいように真っ黒にしたくなる。もっと言うと、黒で発泡体なんてのは完璧だとなるわけです。実際、良く作り込んだ日射計の黒板は発泡とは言いませんが、つるつるではなく、でこぼこになっており、これは同時に反射も押さえる役目も持ってます。

光電素子の方に話を戻して、何故拡散板が必要なのかという理由ですが、素子は通常キャンと呼ばれる窓付きのカンカンに入っており、(その理由は不活性ガスを共存させて、酸化を防いだりしている為です。ここの段階で本来はサーモパイルより長期耐久性に優れています。)そのカンカンの設計は、最初から入射角特性に制約が出てしまうという事情があったりします。

ここで言う入射角特性というのは、一般的な生活の上で光電素子が使われる場面を想像すると、カメラの露出補正のフィードバックや、人感センサー、テレビなどのリモコンなど、基本的に我々マニアが想定するお日様の光が入射するときにセンサーと成す相対角度と言った事とは全く関係がない範囲では、十分に常識的な範囲で納得できる特性を持ちます。が、これではお日様相手だと全く歯が立たない。

ここで、拡散板を光電素子の前に設置するのですが、白色の板で選ぶと、普通に思い浮かぶのが、白色アクリルです。で、アクリルは耐候性が汎用の上では非常に高いと言えるのですが、これまた我々用途には限界があります。一般的に紫外線防止剤が混入されており、その理由は紫外線劣化が起こるからとも言え、光を計測する用途では、どうしても劣化の速度が速いと解釈するしかないレベルなんです。ですが、これがまた、接着性に優れており、金属相手でもなかなか強力に、かつ、容易に接着できてしまう便利な素材なんです。

こういう理由で、古くから、光のセンサーには白色アクリルが定番となっており、今に続く仕様で、本当言うと僕も使いたい、使った方が楽、コストが安いと魅力は感じます。ですが、今回は出来ることは全てやってみる、が方針なので、こんなものは使わず、PTFE(通称テフロン)を採用しました。

このテフロン、正直やっかいです。機械加工の面で言えば、鏡面仕上げが難しい。接着性で言えば、まともな接着は不可能。値段では、とにかく高い。反面、耐候性、安定性、耐薬品性(酸性雨対策)、撥水性、吸水性は、これ以上理想に近い素材はない。これら無敵の特性が無ければ使わないのですが、使うしかないと判断しました。

次に、形状です。筐体の縁を基準に、1.フルフラット、2.円柱凸型、3.球面型の3タイプがあり得る形です。凹型は水やゴミがたまるのであり得ない。全ての形状が既出であり、オリジナリティは出せ無いなあと思いつつ(しかし、後ほどオリジナリティは出せる事が判明)、それぞれの形の意味を考えました。

DiffType123.jpg
1.フルフラット、これは一番素直な形ですが、黒体以外の物体は全て反射率を持つことを知らないか、無視している形状と言えます。白色の拡散板で光を反射しないものがあればこれも良いのですが、そんなのはありません。2.凸型、これは意味があり、1で問題となる部分を補正する事を考えた形状です。3.球面型、これも意味があり、雨滴を留まらせない、乾性沈着を減らす。ここまでで1以外は良いと判断できます。こんなものの実測値なんてどこも公開しないので、実際にデータを取ってみる訳ですが、結果はこういうことになります。

DiffETCwoRing.jpg

1. フルフラット、赤
2. 円柱凸型、緑1mm凸、オレンジ1.8mm凸
3. 球面型、青

ここまでで解ることは、1.フルフラットと3.球面型はほぼ同じ特性。特記事項85°以上でフルフラットが最悪。2.円柱凸型については出っ張りの寸法で80°までの特性は理想的な特性まで調節可能。

まともな設計開発者であれば、ここで考えるわけです。円柱凸型であれば、平板アクリルをレーザーカットすれば仕上げも不要で綺麗な仕上がりを望めるし、そもそも特性もなかなかによろしいではないか。おっと、ここで忘れちゃあいけねえのが3.球面型のデブリを減らせる特性です。これはメリットです。
そういうわけで、試してみました。4.球面型+凸型、グラフでピンク。

DiffType4.jpg

どうよ、これ。よろしいではないですか。とっても。ま、実際は1.3mmを出すまでにそれなりの数の拡散板を製作した背景はあります。(製品版はあと0.05mm刻みで理想を追ってます。)

まだ拡散板ネタはしつこく続きます。が、次回に。

日本環境計測国産部門担当HK
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posted by EMJ-TM at 18:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記