2013年10月28日

PARセンサー内蔵のUV/IRカットフィルターの劣化要因と陰陽

PARセンサー内蔵のUV/IRカットフィルターの劣化要因と陰陽

Siフォトダイオードを使った光合成有効放射センサーでは、Siの感度波長域が200〜1100nm在るために、PARの定義である400-700nmのみに感度を持たせる際、UVとIRをカットするフィルターを用います。

そしてセンサーとして見たとき、経年劣化によってその出力が徐々に減少していき、光に対する直線性は保てるものの、個別に決定された検量線、校正係数が変化してしまうという現象が生じます。

その主な要因は具体的には、UV/IRカットオフフィルターの金属蒸着膜の劣化であり、劣化の要因は水蒸気、水であると。金属の酸化なもんですから現象はとても単純です。

では、フィルターの劣化は具体的にはどんな具合なのかというと、そんなのを調べた論文なんて見あたりません。

弊社には幸い(?)にもそういう壊れた色んな測器がユーザーから送りつけられてきます。この場合、所詮ジャンクなわけで、分解するのに抵抗は全くなく、平気な気分でいろいろな症状を確認できるのですよ。

多くの場合、弊社で販売した測器ではないことが多く、ユーザーの意図としては、「おめえんとこ国産でいろいろ作っているわけだから、こういうひどい壊れかたをするブツは作るんじゃねーよ。だから、これ見て学べ。」という、そういう優しいメッセージではないのかなと想像してます。だって、メッセージも連絡もメモすらないわけで。

では典型的なUV/IRフィルターの劣化を確認してみましょう。分光器にかけると、こんな感じの結果を得られます。
UVIRFIL.gif
一目瞭然ですね。透過スペクトルの形はセンサーとしてオーバーオールの特性ではない事に注意。UV/IRフィルター単独の透過スペクトル。この透過した光がSIに到達する構造です。

PARの仕様書に書かれている呪文の1つに、「年間ドリフトが×.××%程度生じるので、年一回程度で送り返してね。再校正して送り返すってサービスやってるからね。そんでもって、そんときの料金はこのくらいなんで、よろしくね。」というのがあります。

ここで言いたいことはもう解りますね。これだけ分光感度特性が変化した物を再校正って、幸せになれるのか?

まともな判断として、これはゴミです。ついでに、ゴミの判定基準は新品時の出力の-10%を越えた物は全部潔く捨ててしまってください。たとえそれを再校正して使っても、あなたの論文に使える確度を持つデータは決して得られません。だって、手元にあるそれは、PARの定義からずれてしまった分光感度なのですから。特に赤の領域が過小評価されて、相対的に青が強すぎる感度になっています。

LED光源なんかを使う植物工場の場合はもっと悲惨で、赤はメインの照射光ですから、LEDが劣化したのか、センサーが劣化したのかわけ解らなくなってしまいます。

追記すると、劣化の方向がプラス側だとすれば、それは他の原因が考えられます。拡散板の劣化の可能性もありますが、電気的な故障の可能性も含んでいます。捨てる前に出来る範囲で点検するのは良いと思います。

「劣化を防御する方法は無いのか?」という事は当然考えますよね。でも残念ながら、ありません。劣化を防ぐには水蒸気、水をシャットアウトする構造でなくてはならず、それはそういう設計をしてから製造するしかなく、ユーザーでは手の打ちようがないのです。ただし、お金をかければ別ですよ。ガラスドーム日射計の筐体に入れてしまう強者もごく少数いらっしゃいますし、それはとても早い正解だと思います。

「フォトダイオード日射計」2013年10月07日で掲載した内容の通り、アクリル拡散板を採用した時点で、設計者は吸湿性(=透湿性)を認識した上で採用しているわけで、内部に乾燥剤を入れたりしても対策にはならず、結局のところ推定寿命長くて2年、修理不可能という設計、仕様で製造しているという話になります。

世界を見れば湿度の低い場所が在ることにはありますから、そういうところで使う時には、寿命は延びるでしょうけど、日本を含むアジア、熱帯で使う場合は寿命が設計より縮むわけです。たとえ室内で保管していてもです。

じゃあ、ウチではこの問題にどう対処するのか?というのが本題です。以下の水を入れない対策2つ、それでも入る水の対策1つ、そして最後の手段1つという計4種類の対策。

1.水蒸気と水を中に入れない手段として、PTFE製の拡散板を採用しています。PTFEにした理由は耐候性や紫外線の透過性能なども在るのですが、一番の理由は、エンジニアリングプラスチックの中で、吸水性が0というのは、PTFEとPFA程度でしょう。後者は透明度が高くて、光の拡散が少ないのでセンサー目的には使えず、そうするとPTFEのみが残ります。

2.Oリングからごく微量透過する大気中の水蒸気の対策として、ガス透過係数の低いU種NBR(普通よりちょいと硬いやつ。普通は1種)を選定。バキュームグリスを忘れずに。U種の水透過率は「低い」と言えるまでで、0ではない。

3.ということは、それでもやっぱり入って来る水、しつこいですね。なにせ大気中には常時水蒸気が存在し、雨も降る、だから、乾燥剤としてモレキュラーシーブを封入します。粒径1mm程度の1粒あたりでMIJ-14のデッドボリュームに30℃、60%RHの水蒸気が入った場合、DP-50℃まで乾燥出来る計算ですすが、これを約100粒を内蔵。

4.理想的には半年に1回、甘くて1年に一回は乾燥剤を交換していただきたいのですが、そうすれば、水がないからフィルターの劣化も起こらない。しかし、ご存じのように、そういうメンテは忘れてしまう事が多々ありますよね。例えば5年ノーメンテだと、いくらなんでも劣化しないと言い切れないわけですが、ここで、最後の手段、もし、フィルターが劣化した場合、そこだけ交換可能です。

DSC00385.gif
電気関係とフィルターを除く主要構成部品の写真。旋盤加工品が多いです。
すみません。フィルターは撮影目的程度では封を切りたくないんです。組み立て直前に封を切ります。

「修理できるできるって言うけど、一体なんぼかかりまんねん?」と思いますよねえ。
「そりゃあ懐次第でっせ。」とは言いませんからご安心を。ウチは時価のすし屋じゃないです。こちらに予想される主な修理内容と校正費用を掲載しています。http://www.environment.co.jp/study/MIJ-14Repair.pdf
腰上と腰下で校正の必要の有無の分岐はどうしても生じます。

話は飛びますが、PTFEを採用した段階で、あたりまえですがPTFEのデメリットともつきあわねばなりません。プラスチックのくせに射出成型ができない。これは切削で対応出来るのですが、やっぱり高めになる。もう一つがやっかいで、接着剤でくっつかないという嫌な性質。くっつくと謳う特殊な接着剤も在るには在るけど、耐候性、寿命が短くて使えない。なのでOリングで締結するしかないのです。これは明確にコストアップを招くデメリットなのですが、ここに、「修理できる」という概念を持ち込むとメリットになるとも言えます。

フォトダイオードを使った光センサーの類は、えいやっとエポキシ系接着剤で筐体内部を埋めてしまい、拡散板も接着剤でくっつけてしまうという構造が多くの場合採用されているのはご存じの通りです。だから修理できない使い捨て仕様になってしまう。

一方で、弊社のセンサーはそういう構造とは無縁なので、修理が出来る。しかしながら自動的に製造コストはざっと5倍以上はかかってしまいます。だから本当は販売価格を今の1.5倍にはしたいけど、でもねえ、多くに使っていただかないと意味がない。

値引きが難しいと言うデメリットは、どうか、理解してください。販売価格を高めにして、値引きして販売する事よりも、販売価格そのものを下げる事の方が仕事なんじゃないかと思うからです。こういう数が必要な類の製品は。

メリットはデメリットと対である。陰と陽ですねえ。

日本環境計測国産部門担当HK
http://www.environment.co.jp/
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2013年10月25日

日射計PARセンサーなどの水平器と水平出し作業が招くしみじみとした日暮れ

日射計PARセンサーなどの水平器と水平出し作業が招くしみじみとした日暮れ

「おたくのね、PARセンサーを使ってるんだけど、これ、3本のネジで水平出し、2本の付属ネジで固定って書いてあるじゃない?それ、やり方がわからんのよねえ。あと、なんで先がとがってんのよ?危ねーじゃねーか。そんでもって、これ、抜けねーぜ。どうなってんのよ。」

意外な問い合わせである。本心はね、見りゃ解るだろ、そんなもん。と思うのだけど、やっぱりねえ、そうとは言えず適度に解説を始めるわけです。結果、20分を消耗してしまう。

ウチの製品を買ってくださる方の大半は、「よく解っている人」なのを良いことに、「そうでない人」、もしくは「これからそうなろうとしている人」、もいらっしゃるはずで、そういう事を確かに忘れている事があるなあと実感させられました。その理由で、このタイトルです。

光関係の測器には水平を確認するものが最初から付いていたり、オプションで付けたり、という違いはあるけど、なんらかのそういうものが使われています。名称なんか知らなくても、その使い方や意味は見ただけで明確なので、気にしてないのが普通ですし、詳細を知る必要は全ての人に対しては無い、と思います。が、せっかくなので、正式名称を公表します。

「丸型アイベル水平器」と呼ばれています。

無駄に学べますねえ。僕も買うまで知りませんでした。割と色んな用途で使われておりますけど、例えば昔のレコードプレーヤーの高級品、最近でもCDプレーヤーの水平出しに使う方も居ますし、(どっちもマニアですね。)、もっとメジャーなところではカメラの三脚に使われてますね。

色んな仕様の物があるので他社製品には当てはまらないのですけど、弊社の光センサーに装備されている水平器の仕様は以下になります。

外径 φ12mm
高さ 7mm
材質 アクリル
感度 R114
液色 無色
基準 底面基準

もちろん「国産の」特注品です。何故国産を強調するかって言うと、さかのぼること5年ほど前、中国製をただ安かったという理由だけで採用したときに、液体が全て蒸発してしまったという痛い目にあったからです。なんとその確率は1年以内55%以上、2年以内100%という素敵な数字を記憶しています。この蒸発は、屋内保管であっても生じる現象だったのは忘れもしません。この理由で、海外の部品は、致し方なく使うしかないとき以外は、決して積極的には使わない決心をしたのでした。

普通は気泡が中央にくるようにセッティングして、固定する。それだけ考えておけばよいのです。ただ、たまに調整が難しいときがあり、例えばタワーの上に設置したら、タワー自体が風で揺れるもんだから、日射計の水平も当然ながら定まらないって場合などに出くわします

こういうときは現実を鑑みて完全な水平をあきらめるのですが、ここまできてやっと浮かんでくる心配事があり、一体何度のエラーが生じているのだろう?と、やっぱり思うわけです。そして家に帰ってからもそのことが気になって眠れず、かつ、そういうわけわからん事で悩んでいる自分が許せない、なんて気分になるのは健康によろしくないのです。ここで白黒つけましょう。

まずは、水平が出たときの気泡の位置。ど真ん中です。極めて理想的。
level00.jpg

次に0.5度の傾き。赤い線と気泡の外周が重なったところになります。
level05.jpg

次に1.0度の傾き。気泡が1/3赤い線からはみ出たところになります。
level10.jpg

これが上記仕様の感度R114の場合の見た目と角度です。ついでに言うと、1.0度を超えて更に傾けても、気泡が素直な動きじゃなくなります。それはレンジが狭いんでないの?と思うかも知れませんが、実はここには設計者からのメッセージが込められていて、「性能を出し切るには1.0度未満の調整をお願いしますね」と言っているのです。

もう少し正確に表現しますと、「こっちゃあねえ、入射角特性を結構努力して向上させてんだから、そりゃあ、涙ぐましい時間を過ごしただけのことはあるってなもんよ。だけどね、最後の最後に設置が甘いと、全て台無しにしちまうってなもんだ。そういう事なもんだから、どうか、どうか、せめて水平±1度未満には調整しておくんなまし。」となります。

実際の目標値は、赤い丸の中に収まっていればOKと考えてください。僕のようなマニアはひたすらど真ん中を目指します。

さて、その調整はどうやるかというとですね。コッチの方が案外知れ渡ってないかも知れません。適当にねじ回してみれば案外それで出来たりしますから。

図示します。
neji2.gif

例えば、オレンジを右に回すと気泡は左上側に動きます。他の色も同様です。こうなる理屈は、ネジを右に回すと、回した分だけネジが底から出っ張ります。その部分が持ち上がるわけです。そうすると気泡は上に行こうとする。たとえば、写真の状態の気泡を真ん中に寄せようとする場合には、黄色を右回しする、が正解になります。

一番大事な事は、気泡は上に行こうとする。これです。調整時は気泡になった気分でネジを回してみてください。不思議と、とっても素直に動いてくれるはずです。どこまで気泡になりきれるかが勘所です。

さて、水平器と水平出しの手順が理解できたところで、弊社の水平出し用のネジ3本の先は何故とがっているのかについて、まずは現物確認を
togarisakineji.gif

こんなものです。
次に図解しましょう。上図が普通のM4ネジを使った時、下図がとがり先M4ネジを使った場合です。
levelMIJ.gif

普通ネジの場合、ネジの半径2mmだけ支点が動いてしまうことが解るでしょうか。そして、この支点の動きは気泡が中央付近に近づくほど頻繁に、いきなり生じる特徴を持ちます。

この動きが実にやっかいで、実際に操作してみると、「あとちょっとで気泡が真ん中に来るねえ。終わったら一息入れるか。」と比較的安泰な気分になりつつある時なんですけど、そのとき、ほんの少し、ほんの少しだけネジを回すと、気泡がグワンとまるで音を立てたように大きく動き、んおっ?という気分になってしまいます。

一回目は良いんですよ。んおっ、となるだけだから。しかし、その後も同じ事を繰り返してしまうことになるのが常で、最後は、「もういいや。この辺で。やるだけのことはやったもんね。」か、「日頃の行いが悪いのかなあ。まあいいや、今日はひっそりと一人で飲みたい気分だな。こういう場合はカウンターがいいかなあ。」か、「なんだコノヤロウ、喧嘩売ってんのか?テメーっ。上等じゃねーか。表へ出ろ。」となるか、その辺の、つまりあまり良い気分では無い、空虚で、次にあきらめて、しみじみとした気分になります。そして気がつくと空はもう夕暮れ時。もうたそがれるしかない。

そりゃあそうでしょう。水平を出す目的の装置が水平を出せない装置になってしまっていて、それを見抜けず買ってしまったことが原因だから。

そして、一番の問題は、気泡は傾いたままというオチ。
でもそれは「あなた」のせいではなく、「ねじ」が悪いと断言します。

では、とがり先ネジを使うとどうなるか。実に気分が良く、短時間で完了できるわけですね。そんで気泡は真ん中に来る。支点が動かないからです。

そしてこのとがり先ネジ、実は旋盤で、一本ずつ切削加工して製造しています。なので、見た目より高価な部品。そうすると、こういうネジは是非とも無くしていただきたくない。そういう思いから、ネジが抜けないように設計しています。抜こうとするとネジ頭が遮光リングに干渉する設計なんです。こんな按配。
togariStopper.gif

こういう理由があるので、イジワルでそうしているわけではないことを、どうか解ってください。

日本環境計測国産部門担当HK
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2013年10月23日

日射計の温度特性と家庭用ホットプレートと諸行無常

日射計の温度特性と家庭用ホットプレートと諸行無常

前回は、日射計の応答速度のお話でしたが、今回は温度特性について記述します。あらゆる測定器について温度特性と呼ばれるエラーの1要因が仕様書に記載されている(まともな測器の範囲で)のですけど、それって何よ?という方も多いと思います。ユーザーからするとそんなのは考えたくもないし、本来はそんなのを考えなくても良いレベルまで、製造側が「作り込み」をすべき所です。

一方で、製造側からすれば、それはめんどくさいし、妙に難しいし、最後のとどめは、開発と製造のコストが上がった分、販売価格を上げる必要があるけど、8割のユーザーにはその意味を理解してもらえず、姿、形、目的が同じように見える競合品の方が安ければそっちを選択するという自らに不幸な結果を招く、つまり、関わるとあまり良い事がないという特性の1つです。

だからこういうのは、手を抜こうとすると、こういう条件の下でこういう精度ですよ。という記述で終わらせてしまおう、目立たないような記載で、と考えてしまう事も解らなくはないです。

では、それを理解する、もしくは理解しようとするユーザーにとっては、どの程度の意味と考える価値があるのか?を日射を例にしてお話ししたいと思います。

先の記事で掲載したISO9060を再表示します。ISO9060.png

温度特性の項目が上げられていますね。±2、±4、±8%という順番で定義されています。センサーに定常光を照射し続けた条件で、50℃の変化が生じたときの出力変化の割合を示しています。動いちゃいかんだろ、そんなもん、と思うでしょうけど、動いてますし、そういうのを無意識か意識しているか関係なく使っているのが現実なんです。

具体的には-20〜+40℃くらいの範囲での試験結果が多く、これは、昔のフロン冷媒型の環境試験器の性能のうち、低温寄りのスペックに該当しています。実際にこの温度変化で特性が変化するのはサーモパイルのみですから、その付近の温度を計測しつつ、X軸に温度、Y軸に出力をプロットすれば、温度特性のグラフが描けます。

この50℃のレンジは実はとても的を得ていて、日本でもだいたいこの程度年変動すると考えて良いです。実際はそんなに無いじゃないのよ?と思われるかも知れませが、気温の変化ではなくって、日射計の温度ですから、夏は40℃越えますし、冬は場所にもよるけど0℃未満になることも多々あり、特に放射冷却がきついときのサーモパイルの温度は、黒色ということもあり、とっても冷えてます。

そして、その温度変化は日変化と年変化の両方がひっきりなしに生じています。この辺で、この特性の重要さがおわかり頂けるはずです。言い切りますが、この特性はとても重要なのですよ。

弊社でもこういう試験は環境試験器で行いますが、実際の所とてもめんどくさい試験です。試験結果の再現性を確認するために複数回の試験を行ったり、光源そのものの時間変動をフィードバックしたり、冷却時に結露が試験の邪魔をしたりするので、その対策をする治具を作ったり、センサーの筐体が持つ熱容量次第で、試験器の温度変化の勾配を検討したりなど、など、という塩梅です。

こういう話はノウハウもあったり、そもそも明るい気分にならない類の話です。ここまでがんばらなくても、かつ、お金が無くても、かつ、人に頼らなくても、楽しく、笑えて、ちょっとだけスリルを味わいながら試験できる方法があります。その実施例をSiとGaAsP型フォトダイオードの温度特性の測定について記述しましょう。こういうことをかつてやったなあという、回顧録でもあります。

それぞれの感度波長帯は一般的に、Siが300〜1100nm 、GaAsPが380〜690nmです。偶然にもGaAsPはPARの定義にほぼ同じなので、PARによく使われますね。Siはご存じだと思いますが日射計によく使われます。

ここでおもむろに家庭用ホットプレートを登場させましょう。これはあれですよ。ホットケーキ、お好み焼き、ちょっと気が利く場合はたこ焼きも焼けますというあれです。お持ちじゃない方はリサイクルショップか、粗大ゴミで入手しましょう。そういう出の悪いブツでも、経験上90%の高い確率でちゃんと動きます。今回の用途では焦げ付き予防のテフロン加工が剥げていても全く問題ないです。捨てられる原因は主にこれです。

このときは、各センサーに熱電対を組込み、90℃まで加熱後、放置、自然冷却される過程を記録しただけ。そのときの写真がこれ。
Hotplate.gif

なんとも素敵な光景。とてもまともな人間がやる事じゃありません。

計測の間は定常な光を連続的に照射する必要があったので、それには一つのハロゲン光源を2分岐の光ファイバーで各センサーに導光する手法を採ってますが、普通はそんなものは持ってないですから、古くて使わなくなったプロジェクターで広範囲に光を照射するか、車用のハロゲンをバッテリー駆動するのも良いでしょう。注意するのは1点だけ、点灯後30分程度は暖機運転してから試験してください。あらゆる光源は、バルブの温度で出力が変動するからです。30分も待てば気温、放射との熱平衡が完了しますから。

ホットプレートの温度コントローラはバイメタル式、つまりON&OFFの制御が一般的です。そして、そのやり方は結構テキトーで、だいたいこのくらい、という表現になります。

センサー側に温度計を仕込んで、その温度を見ながらコントロールするわけですが、プレートの温度とセンサーの温度には大きな時間差があります。だから、例えば、3分加熱、電源を切り、その後のセンサーの温度変化を20分確認する、という具合に、何度かにわけて、そのときの室温、使っているホットプレートの能力、調子の悪さ、プレートとセンサーの熱結合の按配などで決まる時定数を確認しながら、加熱時間を秒単位で決めていく事が肝要です。

設定と結果の関係はリアルタイムだとは言い切れない場合が多いので、こういうことになります。なんだか麹菌を育てる杜氏のような話になりましたが、あっちは結果がもっと長い時間の後に出てきますから、ホットプレートのほうがだいぶマシです。

経験上センサーの温度が120度を超えると、何かがおかしくなったり、自然冷却後もセンサーの特性が変わってしまったりします。これを破壊と言います。

実際に180℃を越えてしまったとき、気泡レベルの液体が気化か膨張したせいで、破裂させてしまったことがあり、爆竹程度の音がしました。この辺がスリルというか、醍醐味でしょうか。結構楽しんで頂けるはずです。

さて、こういう形でチープに実施した試験の結果を示します。
tempGaAsPSi.gif

結果として温度特性は、Siが-0.03%/℃、GaAsPが+0.097%/℃。さて、ここで、先のISOの基準を同じ指標に換算してみましょう。±2、±4、±8%/50℃は、±0.04、±0.08、±0.16%/℃。

Siを見てみるとセカンダリースタンダードの枠に入ってしまいます。なんにもしなくても。GaAsPでもセカンドクラス程度は満たしています。

ただし、ここでの試験の条件として、Siの受光波長帯のフルレンジにおける温度特性であり、日射計に使う場合はこういう特性、PARに使う場合は、そのウチの400〜700nm範囲での温度特性を論じるべきと言えますから、Siはこうである、という乱暴な言い方はできない事に注意せねばなりません。波長毎の温度特性を求める必要があるということです。

こういう試験レベルでは楽しい、とだけしか思わないわけですが、その延長に何が見えてくるかというと、CMP22というハイエンド、別格、唯一無二に位置する100万円の日射計。その温度特性は+0.017%/℃ at –20 to 60℃というとても良い値を出します。150年の歴史の成果、温度特性がリニアなサーモパイルに非リニアなサーミスタの組み合わせで、実用温度域の温度特性を極めた経験技です。

うかつにも、かないっこないなあと当初は思ったのも事実でしたが、それでも、この数字を乗り越えなければならないわけです。安価に、安易に、という項目を更に付け加えて。特に日本の職人はそうでなければ存在理由が無くなります。

さてここで、うちの職人はどうしたかというと、受動型温度補償回路P.T.C.C.(Passive Temperature Compensation Circuit)を開発し、販売中の全ての光電型(K2型と呼んでいる)に搭載しているというのが回答で、±0.01%/℃という値を出していますが、まあ、その背景にはとてもめんどくさい、時間がかかる、そういう類の回路の調整を行ったわけですが、量産時は何も考えないで、組み込めばよいだけ、という設計をしています。このような結果になります。
PTCCresult.gif

そうまでしてでもですよ。結局は50℃の変動で0.5%は誤差が生じるのです。完璧はない。

日本には諸行無常という言葉がありますが、この世の現実存在はすべて、姿も本質も常に流動し、変化し、一瞬といえども普遍性を保持することができないって意味らしく、それはものづくりの職人の場合には痛感する場面が多々あります。

諸行無常の物体たちは、それぞれについて解明すれば、性格というかクセがあり、そのクセは再現性があったりするわけで、そのことを理解し、ひらめき加えて、それらを仲良くなる方向に組み合わることで、統合する。そうしてやっと、ある1パラメータだけが「常」になるという工夫、これが「精進」なんだろうなあと考えたりするわけです。PTCCはその代表的な作業でした。

最初から「在る」物性とは関係なく、ただただ、人の都合に合わせているだけなんですけどね。

そう感じてしまうタイミングは、ねじを回したり、はんだ付けしながらなどの、頭を全く使わない場面が多いんですけど、そういう瞬間が「無我」だったりするのかなあ。だとしたらもっともっと考えない時間を増やすべきですねえ。

無我じゃなくって馬鹿になるって。

日本環境計測国産部門担当HK
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2013年10月08日

日射計の応答速度に関する考察

日射計の応答速度に関する考察

前回は、新規開発したSi日射計の評価と、その限界についてを述べ、2つの異なる原理で日射という同じパラメータを計測し、その差は異なる誤差要因がそれぞれに内包された結果だけが目に見えてくるものであり、特定の誤差要因(この場合はスペクトルエラー)のみを評価するという事は、とっても難しくなってしまうという内容でしたが、今回はその一例として、応答速度について述べます。

何故応答速度?と思うかも知れませんが、弊社の光センサーの場合については、入射角特性、温度特性については、熱型とおおよそ同じか、もっと良いというところなので、残る評価可能なパラメータがそれしかないという理由です。

もちろん先に述べたように、熱型特有のエラーもありますが、それは評価方法も含めていまいち確立されていないので。

以下は曇りの日の8分間の抜粋データ、インターバル1秒、瞬時値の記録結果になります。抜粋の根拠は、変動が激しく生じた部分になります。


ErrorMIJ_CMP.gif
Location:EMJ roof top Fukuoka-city (N33.687215,W130.442657)
Time:2013.10.3 9:40 to 9:48

通常の業務的な日射の観測は実際のところ、インターバル10秒から10分、瞬時値の記録というのがその範囲でしょう。これは熱型を使う場合、その応答速度未満で計測しても意味が無くなるというのが理由です。その瞬時値に含まれる応答速度を起源とするエラーについてのお話になります。

ここで使用したCMP21はカタログによると5秒(95%応答)ですから、比較的早い方と言えます。対するMIJ14RADは0.3μsec(99%応答)になり、おおよそ0.3/5000=6×10^-5、5桁の相違です。

測定値が急に下がったときに、エラーがマイナス側に振れ、測定値が急に上昇したときに、エラーがプラス側に振れるという特徴が見えます。ここで言うエラーとはMIJ14RAD÷CMP21です。

次に、エラーと勾配W/m2/secの関係を見てみましょう。

Error_DeltaW.gif
驚くことに、とても素直な関係にあります。応答速度の相違によるエラーと断定してよさそうです。さらに予想と異なり、±10W/m2/sec程度の変化でも5%程度の誤差に相当しています。この程度の変化は実際の日射強度の変化においても、頻繁に見る範囲です。

Error =0.0036×ΔW+1.0
Error:CMP21/MIJ14RAD
ΔW:CMP21の1秒間での変化した出力(W/m-2/sec)

式にすると、なんだか論文風に見えてしまいますねえ。第二項の1.0は勾配が無いときのエラーという意味で、1.0はエラーが0を意味します。

エラーの定義をMIJ14RAD÷CMP21ではなくて、MIJ14RAD-CMP21にしても同様な相関関係が得られ、以下になります。
Error_DeltaW2.gif

Error =1.6953×ΔW+4.6103
Error:MIJ14RAD-CMP21(W)
ΔW:CMP21の1秒間での変化した出力(W/m-2/sec)

意味するところは同じですが、絶対値を補正していて第二項が4.61。意味はわかりませんが、第一項が今回の解析範囲でも±45W程度に相当するので、その1/10と考えると誤差範囲なのかなと思います。もし、上昇速度と下降速度に差があったとしても切片は関係ないですし。

あ、今気がつきましたが、4Wというと熱型の出力が0.03mV程度なので、ロガーが拾ったノイズレベルという見方が良いかもです。


フォトダイオードの熱型に対する優位性を示したかったんですが、確かに示せてはいると思います。しかし、どっちかというと、熱型の応答速度起源のエラーをフォトダイオードで補正できそう、という方向が面白いかもしれません。だって世の中、既に熱型があふれていますから。そして高度なレベルの観測では1%未満のエラーを追及してもいますしね。瞬時値に10%以上のエラーが含まれていて、それを補正できれば、それはうれしいことじゃないかなあと思います。ま、曇りの日だけの話ですが。

曇りの要因が水蒸気や雲であれば、今回の勾配の変化は、主に雲の厚さに依存していると思われ、雲の透過スペクトルの形は変わらず、透過の度合いが変わるだけと考えられます。そうすると、応答速度の違いによる熱型の瞬時値に含まれるエラーの補正が出来る可能性は示せるかなという意味です。8分間で、他の条件(入射角、温度特性など)や、センサーの状態などもそう変化していないと思いますし。

総じて言うと、前回の「フォトダイオード日射計」で評価した、曇りの日のエラーは、これはフォトダイオードのエラーを表現したつもりでしたが、熱型のエラーを表現してしまった。というほうが正解かなあと思います。前回は10秒平均値を5分インターバルでデータ取りしていますので、今回よりもエラーが低く見えるというだけ。したがって、日積算値の年変動でしか評価方法は残っていません。これはとても時間を要するので、この話の続きは先になります。


話を戻して、こんな数字遊びは、どちらかというと僕を含むマニア向けか、微気象、森林のギャップの計測やPV向け、つまり高速度で計測せざるを得ない場合のお話です。飛行機に搭載してという場合は、もはや熱型は思いっきり不利でしょう。PV向けの場合はリファレンスセルと呼ばれるものを基準にすることがありますけど、それは入射角特性、温度特性などが無茶なので、太陽光強度を計測しているというよりも、小さな太陽パネルを置いてみた、というくらいの意味しかないでしょうから、確度という意味ではとても意味があるけども、精度という意味で、もしくは環境においたとき、という評価では意味がなくなります。

そういう理由で、熱型のほうがよいという文脈もネットだけでもよく目にしますが、今回の考察で、そうとも断言できないもんね、という根拠が示せたと思います。少なくとも10秒超えの応答速度の熱型は、問題の方が多いかもしれないという話を以下に。

少し一般論に戻して、一般的には日積算値がミニマムの値なので、もっとシンプルに、ただ瞬時値を積算するだけでも、ここでお話しした補正、もしくは応答速度の問題をクリアにする事が可能です。

この方向の場合、付け加えるならば、5秒未満応答速度の熱型に限っての参考例(ソレしか持ってないので)としてですけど、10秒平均値ではエラーは半分にもならず、100秒越えで1%、600秒で0.5%になりえるとは言えます。これはグラフで表現します。
Ave.gif

ただし、大前提として、今回の考察は1秒のインターバルが元になっているところが注意です。10Hzで評価するとエラーはもっと大きくなるでしょう。地表に達する実際の太陽光線の周波数解析が先になり、変動周波数の分布を確認してからインターバルを設定しないと本当の意味での考察にはならないと思います。ここは論文じゃないから勘弁してね。これ書いているのは研究者じゃなく、ただの職人ですから、ものづくりが一番の目的なんです。

一般向けに言えることとしては、応答速度が10秒以上のファーストクラスやセカンドクラスをお使いの場合(中には30秒かかるものもあります)で、日積算以外の値をパラメータにしている研究の場合は、曇りの日や人工的に遮光するなどの場合、とっても注意が必要だとは言えます。

日本環境計測国産部門担当HK
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2013年10月07日

フォトダイオード日射計

フォトダイオード日射計

先の記事で、既存のフォトダイオード型日射計の問題点の解説を行いましたが、今回は、その続き。

アクリルの拡散板は、PTFEの拡散板を作ったら解決しました。以上です。本当にそれで以上なんです。何故かというと、紫外線劣化無し、酸やアルカリの劣化無し、吸水率0%、もはや何も問題を起こさない物質です。一点のみ、物性に過度な特徴があり、そこのお話は後ほど。

もう一つの波長応答特性について、Si日射計の中身、Siフォトダイオードは図のような波長に応じた感度が代表的です。

sisensitivity.gif
参考までに晴れ、くもりの時のスペクトルも表示しています。Siは300から900nmにかけて感度が上昇し、その後1100nmにかけて上昇するという特性を持ち、太陽光線は500nmをピークに山形となります。晴れとくもりのスペクトルの大きな違いは900nmあたりで分割でき、900までは晴れの方が相対強度が高くなり、900以上は低くなるという性質を持ちます。

この事から、Siを使うと晴れと曇りでオーバーオールのスペクトル感度が変わってしまうため、誤差が生じ、「熱電堆式の方が感度がフラットなので、その誤差が小さい」という表記は「Si日射計+スペクトルエラー」とか「シリコン日射計+スペクトルエラ」と検索すると、20000件以上(日本語だけでもね。ちょっと異常。)、同じ事書いてるねえという事が解ります。一体何人がコピペした表現なのか?驚きです。なんか理由があるんだろうか?

つまり、先のISO9060では受光波長域がSiは狭いとされ、感度のスペクトル強度を見ればフラットでないからダメ、そういう事になります。ただ、そんなことは百も承知、それ以外のデメリットが無いという部分に着目するのが今回の開発です。しつこくいきましょう。

ここで可能性を考えてみます。波長範囲はどうにもなりません。物性ですから。一方、感度がフラットではない、というのは調整できるか?できますねえ。PAR作るときには、そんな技術は基礎です。

で、そういうことを行なうとどういう結果になるのか?
誰もやってないので、解りません。

ではやってみましょう。その結果がこちらです。

晴れ
compariClear.gif
くもり
compariCloud.gif

PROTO1がカスタム品、PROTO2がスペクトルをいじらないタイプ。基準はCMP21(50万円超え)の通風ファンが無い仕様のもの。インターバル5分、平均化10秒の条件。

なんだかとってもあっさりと、しかしまあまあ良い結果と言えるでしょう。

本当は、ここから先の調整をやりたいと思っていたんです。しかしながら、開発しているSi日射計がスペクトル以外にエラーの要因が無視できる所まで完成させているため、逆に熱電堆式のエラーの要因の方が数多くなってしまうため、ここから先はどっちが正解なのかが良く解らないという問題が出てきてしまいました。特にゼロオフセットエラーは、ISO9060では通風ファン付きの条件で、って書いてあるし、じゃあ、ファンがないとどの程度出ているのかとなると、そんな論文は見あたらないし、というわけです。

唯一数字が上がっているのは、±7W@200Wファン付き時って書かれている数字だけ。でもそんなのはきっと200Wの時だけ出るって意味じゃないし・・・。

行き止まり。ですね。

しかし、これだけでは、なんだか残尿感しか残りませんねえ。なので、積算日射量という概念に逃げてみます。

それ、何?という方も多いと思われますが、文字の通り、日射の積算した値です。どうするかというと、記録したデータを全部足して、プロット数で割って、平均値を出し、それをプロット数だけ掛けて、以上です。ただ、WではなくJを使うことの方が多いので、これに60×60×1000します。

するとこうなります。
comparisigma.gif

結果として、もうこの程度のエラーは現場では本当にどうでも良いですね。Siのスペクトル感度の最適化は、効果があるとの判断もできるし。

実際のところ、ガラスドームが汚れたら、この程度は直ぐに出るエラーです。鳥の糞は何故かよく命中するんですけども、そういうときはこんなもんじゃあないです。

こういう流れと理由から、これ以上の評価は出来ないと判断しました。ただし、チューニングの継続はやっていこうと、実際継続しています。

ただ、今回は20000件という数字がとっても心に引っかかりました。英語では7000件未満程度なので、人口比ではもっと異常な値。日本人はそんなにフォトダイオードがキライなのか?と。じゃあ、SIの良いところを記載しても多勢に無勢なので、問題なく言い放題じゃないのと思いましたので、次回はそういう部分を遠慮気味に少しだけ。

なぜ遠慮しなければならないのかというと、世の常で、多勢に無勢な場合、無勢側は理屈抜きでボコボコにされてしまう運命だからです。これは人間の本能であって、理屈じゃなく、アカデミックな場所であっても普遍だからです。

しかし、2万件のリンクをたどると徐々に本音が見えてきますね。フォトダイオード型はサーモパイルに比較してこういうだめなところがあるので、後者を買ってね。という脅し文句ですね。これは。ただのセールストークで、真意は高いほうを売りたいだけというのが本音でしょう。そんなのにつきあっても時間の無駄。忘れましょう。

次回は、上記のグラフや計算結果は、熱型が持つ問題が表面化しているとも言える部分についてのお話です。


日本環境計測国産部門担当HK
http://www.environment.co.jp/

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2013年10月04日

熱電堆式日射計とフォトダイオード日射計

熱電堆式日射計とフォトダイオード日射計

なんと5年。

振り返ると2008年からお日様と格闘している事に最近気が付いてしまったのだけど、熱電堆式の老舗Kipp&Zonenの歴史が150年なわけで、それは大した時間じゃないのかなあとも考えられ、頭の中で仕事の遅さを良いように解釈している次第。

ただし前提として、日本の隅っこに位置する完全に零細な弊社が開発なんていう、つまり自由な時間とお金が出て行く、普通は大手しかありえないような贅沢なことができるのか?その理由は、弊社からなにかしら購入してくださるお客様から頂く利益が原動力であることは確実な事実です。感謝のみしかありませんし、実際に「そろそろ新しい何か、出てんじゃねーの?まだか?」という声は頂くわけです。

お買い上げいただいたときには声だったり文章だったりはしはしますけど、「ありがとうございました。」と言いますが、実のところ、ウチの場合は、その後にもっと重要な言葉が隠されており、

「ありがとうございました。今回の利益は○○○の研究開発費用に当てさせていただきます。」

もっとそのときの気持ちを具体的に表現すると

「ありがとうございました。今回の利益はうちで使う環境試験器の購入費用に当てさせていただきます。どうしても今回の試作品のテストにはこれがないと性能試験に支障が出てしまうんです。お買い上げいただきました品の使い道や研究テーマとはまったく関係がなくて申しわけないのですけども、完成の暁にはきっと喜んでいただけると、仮にそれがお客様自身じゃなくても、知らないどこかの研究者にはそう思っていただけると、そう思う次第です。」

となります。「仮にそれが・・」この辺が心苦しいから、全部は言えないってことは多々あります。

だから、とっても自然な流れで、開発の範囲は決まってきます。お客様が喜べるものになるのか?できれば対象が広いととても良いんじゃないの?という尺度だけです。ただ問題が・・・、

スーパーニッチなのにスーパーリッチじゃあ決してない、そういうマーケットなので、「対象が広い」の実現は無理だと思います。そうすると、少数の「ワカル」人に対してだけの満足度を上げる、という方向になり、これは零細でもやれることは多いですし、そのへんだけが面白い、楽しい仕事なんです。

そういうのの一部として、これまでPARセンサー(光合成有効放射センサー)に没頭してきたわけですが、特にJAXAのGCOMプロジェクトはそれを加速させ、その再開発、再改良に拍車がかかり、評価する側、確度を追求する人々と関わりができて、楽しかったのですけども、2013年3月に受動型温度補正回路の開発が終わってからは、まあ、だらだらとしたトピックスにならない程度の改善程度しかすることが無くなり、そろそろ次は日射を計ってみようじゃないか、という気分になったのもこの頃です。

実はPARの片手間で既に2012年4月から着手はしていたので、仕上げ、味付けという作業を繰り返し、その味付けのさじ加減は思ったより難しかったのは確か。

歴史を振り返ること40年程度、PARも1960〜1970年初頭には、熱電堆式日射計をベースに、400-700nm範囲のみ光を通すワイドなバンドパスフィルターをその上に載せてPARセンサーとするという手法が開発され、それを使った観測や評価はレポートが残っています。熱量ベースPARなんて呼ばれています。ただし、波長の最適化を行う前の段階、基礎と呼べる部分が、今の尺度から見るとめちゃくちゃで、入射角特性、温度特性、応答速度、長期ドリフトなど、複合的に数多くの誤差要因が含まれたデータであった模様で、観測できた、と言えるレベルではなかったようです。

何故そんなみっともない記録が残ってしまったのかというと、その当時の国産日射計のレベルが低かった、つまりカスタムベースのスペックが低ければ、なにをしても結果の向上はあり得ないという、あり地獄にはまっていたんですねえ。一方で国策に近い理由で巨大な予算が動いていたので、海外製品をカスタムベースにするわけにも行かず、と担当者はきっと胃が痛かったはずです。

この時代から見るとサーモパイル日射計はここ50年で大きく改良され、現在は平均的にとってもよろしい性能になっていると言えます。特に近年の日本の事情として、エネルギー問題の対策としてソーラー発電(PV)というマーケットを巨大化させたことを背景に、それと同時に日射計の需要も増加して、という時代が現代日本と言えます。もちろん、日射計が民間でたくさん売れるなんてのは異常な事なので、一部の人から意図的に作られたブームやマーケットは直ぐに終わる運命で、どうでも良いとは思います。PVがって意味じゃなくて、それに乗っかるマーケットがって意味です。

さて、今回は、「Siフォトダイオードをベースにした日射計の開発、基本特性の向上、受光感度の波長依存性の最適化とその効果の検証」というPARよりは、多少メジャーなテーマを設定でき、それはつまり簡単に言うと、「Si日射計=簡易日射計と言い切って良いのか?」という表現でいいかと思います。若干の特許からみの作業内容なので、詳細を書けない事もありますが書けるとこまで。

日射計の定義としてISO9060はよく見る規格表です。
ISO9060.png

他のセンサーと印象が異なり、さすが国際規格だなあと思える項目が多いですが、よく見るとこの規格は「熱電堆式であること」というのが大前提になってますね。つまり熱電堆式しか知らなかった、もしくはそれしか無かったという背景が読みとれます。だからこそ、その弱点を良く知っている人々がこの規格を作り、弱点に対しての規格を作ろうという方向性を感じます。良心的ですね。

黄色に示した項目が日射計特有のものですが、ぱっと見てわかるとおり、Secondary standard 以外の規格なんて、誤差がつもると訳が分からない程度にひどく、こんな性能のものは測定器として売って良いのか?と思える程度に甘すぎます。そのくらい、熱電堆式で精度良く作るのは難しかったと言うことだと解釈できます。

また、この表を作った人は熱電堆式は絶対測器ではなく、相対測器である。という事を良く理解しているなあとも思います。どこの天才でしょう。

絶対測器を作るのはとってもめんどくさく、また、その運用管理は恐ろしく手間を要すのが前提になってしまい、日射に関して言えば銀盤式日射計やオングストローム日射計がそれに該当し、それらは僕も見たことさえない物体なほどレアなものですし、日々の通常業務で使えるわけもない原理です。イロイロと問題はあるけれど、現地運転がそれに比較すれば楽、管理も楽、おまけに安くできる、と、そりゃあ相対測器とは言え、みんなが使えるのはとても良いことなのです。

こういうところが、ざっとしてはいますけど、日射計の背景だと思います。で、ようやくフォトダイオードのお話に入ります。

黄色の項目は、実はフォトダイオードはなんにもしなくてもクリアしている、もしくはよほどヘタこかなければ、越えているという事が言えます。つまり、物性としてそういうものであり、改善するための努力は不要と言い切れます。じゃあ残る、年間ドリフト、波長応答特性に注力すれば良いと言えますね。具体的に言うと、応答速度はマイクロ秒、ゼロオフセットAは皆無、ゼロオフセットBも皆無、非直線性も0.0X%未満、方位角特性については、光学設計次第ですが、弊社の場合は問題なし、温度特性も設計者次第ですが±0.01%以内、傾斜角特性は問題ない、という具合です。

年間ドリフトの項目は、既に世に出回っているフォトダイオード型日射計のごく一般的な悪評として、全然ダメ、耐久性が全くない、そういう声は良く聞きますし、僕もそう思っていました。ところが前記したPARの開発で良く解った事ですが、フォトダイオードそのものは全く劣化しない、劣化するのは拡散板とフィルターであると言い切れます。ただし、プラスチックパッケージの安価なフォトダイオードが用いられている場合には、当てはまりません。CANとガラスウインドウでハーメチックに密閉されたフォトダイオードの場合にのみそう言えます。何故かというと、プラスチックパッケージの透明樹脂が熱と紫外線で変色してしまうからです。近年の自動車のヘッドライトのカバーが変色するのはよく見かけますね。これと同じ。

フィルターの劣化については、PAR独特の構造によるもので、日射計用途のものは通常はフィルターが入らないので劣化しようが無い。つまり、拡散板の劣化のみが問題であったと言えます。これはアクリルの紫外線劣化、もしくは吸水性によるもので、前者は単独で、後者は内部に水が入って悪さをしてしまうという事になります。アクリルを使ったセンサーの場合、それ以外の箇所での防水を行っても無駄とは言いませんが、延命程度の意味しかないです。

残る波長応答特性については、Siフォトダイオードは300〜1100nmがその範囲であり、残念ながらフォトダイオードの物性として、クリアできない項目になります。

この辺で問題定義を終えましたので、次回はその対策についてのお話にします。

日本環境計測国産部門担当HK
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