2007年09月03日

ポロメータについて

ポロメータについて

現在国内で使用されているポロメータは4種類あります。(スーパーポロメーターは生産中止なので除外)大きく分けて高精度で高額なので2機種、精度は若干甘目で低価格なのが2機種あります。

低価格で代表的なのがSC-1になります。
SC1-1.jpg
もう1機種はオーストラリアの手動ポンプ型のポロメーターがありますが殆ど使用例を聞きません。
参考リンク:http://www.thermoline.com.au/products/porom.htm

彼の有名なキャンベル博士が開発しているので適当な作りだとは思いませんが、全ての環境下で対応する物でもなさそうです。この辺の理由はローコストな設計が影響しているようです。

センサー部に湿度センサーが使われているのはSC-1でも同じですが、通風しないこと、乾燥ガスを製造しないことが特徴です。これによって、ファン、ポンプ、除湿剤やそれを入れるカラムなどが不要になると言う思い切った設計です。乾電池で長時間動作する、小型軽量、安価という特徴はこういうところが大きく影響しています。ただし実際に使用してみての弱点として、外気が高湿度な場合に測定が困難でした。チャンバーを開けた状態で、フリフリすると、チャンバー内部の空気が外気と平衡します。それがチャンバー内部湿度の初期値となります。つまり日本のように湿度が高く、例えば80%RHだったとすると、最大100%RHまで測定したとしても20%RHの測定スケールしか使えません。しかもこの高湿度域では湿度センサは応答速度が悪いです。Autoモードで測定したら悲惨な結果を示します。

チャンバーヘッドがアルミ削り出し部品です。これは、内蔵する温湿度センサーがそこに装着されていて、葉の温度がアルミブロックを経てセンサーで検出できるような仕組みなんですが、葉の温度は蒸散で下がりますので、計れているかどうかが少々疑問です。実測した方が賢明です。こういう理由から、ここは触らないように気を付けましょう。体温の影響が生じます。また、このくらいの熱容量を持つブロックは環境温度になじむのに十分な時間が必要です。30分以上は測定場所に置いてから計測をスタートすべきです。屋外では日射の影響も大きいので気を付けましょう。

上面にテフロン膜がありますが、そこは外気と通気しています。葉表面→湿度センサー1→湿度センサー2→テフロン膜→外気という方向にH2Oは移動しますが、その移動によって出来るH2Oの濃度勾配を計測する構造です。なので、このテフロン膜も触ってはいけません。この構造は強風下で測定する時には誤差要因となります。
SC1-2.jpg
結果的に、強風下や高湿度の環境では、測定にかなり苦労します。熱帯雨林や東南アジアで使用するなら敢えてお薦めはしません。湿度空調の効いた研究室や外気から遮断された温室なら問題なく測定できると思います。弱点は温度測定の方法と構造、強風下では計測できないという2点です。ユーザーが出来ることは、環境温度に十分なじませて、アルミ部分を触らず、日射をうまく避ける、強風下では使わないと言う事です。

Delta-T社のAP4は、前機種AP3の後継機種として発表され発売開始して10年近く使用されていますし、私も長く関与していますので詳しいです。設計そのものは実にスタンダードなものです。
AP4.jpg

本体内部にポンプが内臓されていて、シリカゲルを通して乾燥空気がチャンバー内に送られます。これがZERO値となりベースラインを検出します。

その後、葉を挟んだ状態で計測し、ベースラインとの差を気孔コンダクタンスとして数値化することで常に定常条件(SteadyState)で測定をしています。

また最大の利点として、測定現場で自己校正が出来る事があげられます。
SC-1はメーカー校正が必要になります。(露点発生器を持ってれば別です。)それに対してAP4は本体に基本データが蓄積されており、なんと穴あきビニール袋を基準として精度補正をユーザーで実施可能なのです。
自己校正を行えば5%以内に精度を維持できます。ユーザーの熟練度が上がれば3%以内に校正を行えます。つまり校正さえしていればべらぼうな値を示すわけがない仕組みです。

チャンバーヘッドもSlotとCircleの2タイプが、一つのチャンバー内にあります。細葉と小葉のどちらでも対応可能です。測定スポットまでのリーチ(葉の端からどこまで届くかの距離)は最大70mmです。AP4はチャンバー上部に光量子センサー、チャンバー内部にサーミスタ温度センサーが付いています。

悪い点と言えば、スーパーポロメータではLCDに表示される蒸散速度(gH2Om-2s-1)が、AP4の画面では表示されない事です。ただし気孔拡散抵抗と葉面境界層抵抗から計算式で算出可能です。

*蒸散速度の計算
E = cv (wvdc - wvdl)
E : flux density of water vapour, in g m-2 s-1,
cv : conductance in velocity units, m s-1,
wvdc : water vapour density, at the cup RH and temperature, g m-3.
wvdl :water vapour density, at the leaf RH and temperature, g m-3.

SC-1については、ココは同じで速度は表示されません。葉温センサーが独立しては見あたりませんが、これは温室度センサーを使っているので、両方同じ素子で検出してます。

* 総評
SC-1での測定は、ある程度の測定知識と経験が必要かと思われます。屋外での測定を環境を変えて何度か試みたのですが、同じサンプルでも環境の影響を受け安定したデータを得るのは至難の業でした。回避するにはアベレージ測定やAutoモードではなくManualモードで長時間計測等で対処するのも一つの手かもしれないです。北米の気候では良いのでしょうけど日本ではすべからく簡単にはいきません。しかし一方で価格をここまで押さえたことは強力なメリットです。対して、AP4は簡単な操作で環境の影響が少ないです。初心者でも手順を守って頂ければ簡単に行えます。使い易さと誰でも安定した計測が出来るようにとの設計思想が入ってますから、構成部品が多くなり、値段が高い結果になっています。

そもそも日本のような高温多湿で、上手く測定するのは難しいです。でも植物は夏に育つわけで、その時期に測定したいわけで、難しさはそこにあります。双方共にアメリカとイギリス製なので、日本の環境までは開発時考慮されているとは思えません。ただし、運良く偶然にも乾燥ガスを使う仕様のAP4は十分対応できています。個人的には精度や再現性に一番効くのは現場でのキャリブレーションが出来るところではないかと思います。

日本環境計測輸入部門担当TM
http://www.environment.co.jp/
このところAP4の修理・校正が何件か入ってきていますが、なるべく(現在のところ全て)弊社で実施してます。Delta-T社に送り返して、「ハイこれだけかかりました!!」って請求してしまう流れの方が、商売的には簡単なんですけど、ご想像通り、輸送コストがバカにならないんです。それと妙にポンドが高いですし。全てのしわ寄せはお客様負担の金額に跳ね返ってしまうので、これは避けたい。とすると、弊社でやるのが一番かと判断しています。

本題ですが、AP4に関する校正は2種類あります。

一つは湿度センサーの絶対校正。AP4に使用している湿度センサーは高感度タイプの気象用途レベルの物(要するに良いやつ)で、応答性が非常によいです。ただ、応答性を良くするにはガラスの感湿部を剥き出しで使用するしかなく、そうすると、長期に渡る使用での微細な汚れが影響する事とのトレードオフになります。AP4では剥き出しなので、出来れば年1回程度の校正を実施した方がよいと思います。これは残念ながら露点発生器が必要なので、弊社に送って頂くのが一番の早道(日本では最速だと思います。)です。設備と根性と時間のある方はご連絡ください。方法をお教えします。

もう一つは、蒸散速度に関する校正。これはAP4に付属する例の穴あきプレートを使用した校正です。本文でも触れていますが、これをユーザーで実施できるところがAP4は偉いのです。でもその時使う紙は何が良いの?と思われる方もいらっしゃると思います。
それは、これです。
kokuyo.jpg

コクヨの吸取紙Blotting paper16枚入り

型式は「シム-1N」
「地球にやさしい古紙の利用60%」というのも環境関係のお仕事をしていると泣けます。近所のホームセンターでのお値段は税込み115円。1枚の大きさでは10枚ほどに切って使用できますから、160回は校正できます。つまり一生ものです。

万年筆用の紙なので、最近は入手困難だったりします。見つけたらAP4使いの方は即買いしましょう。

で、なんでこんな紙なのかと言いますと、水を沢山吸ってムラ無く保持して欲しいけど、垂れ流したくない。という用途なんですが、身の回りになかなか無いんです。この紙はやはりひと味違う性能を持ってますから、お奨めします。

posted by EMJ-TM at 11:21| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
私もSC-1はデモ器を借りて使ってみましたが,TMさまが総評されています通り,AUTOモードでは同一個葉でも測定値の変動が大きく,信頼性が高い印象は得られませんでした.確かに小型軽量は魅力ですが,水田やハウス内など高温高湿度環境では難しいかもしれません.植物計測機器は使用感も含めた商品比較情報が少ないので,これからも期待しています.
Posted by F.Adachi at 2007年09月04日 14:08
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