2013年10月08日

日射計の応答速度に関する考察

日射計の応答速度に関する考察

前回は、新規開発したSi日射計の評価と、その限界についてを述べ、2つの異なる原理で日射という同じパラメータを計測し、その差は異なる誤差要因がそれぞれに内包された結果だけが目に見えてくるものであり、特定の誤差要因(この場合はスペクトルエラー)のみを評価するという事は、とっても難しくなってしまうという内容でしたが、今回はその一例として、応答速度について述べます。

何故応答速度?と思うかも知れませんが、弊社の光センサーの場合については、入射角特性、温度特性については、熱型とおおよそ同じか、もっと良いというところなので、残る評価可能なパラメータがそれしかないという理由です。

もちろん先に述べたように、熱型特有のエラーもありますが、それは評価方法も含めていまいち確立されていないので。

以下は曇りの日の8分間の抜粋データ、インターバル1秒、瞬時値の記録結果になります。抜粋の根拠は、変動が激しく生じた部分になります。


ErrorMIJ_CMP.gif
Location:EMJ roof top Fukuoka-city (N33.687215,W130.442657)
Time:2013.10.3 9:40 to 9:48

通常の業務的な日射の観測は実際のところ、インターバル10秒から10分、瞬時値の記録というのがその範囲でしょう。これは熱型を使う場合、その応答速度未満で計測しても意味が無くなるというのが理由です。その瞬時値に含まれる応答速度を起源とするエラーについてのお話になります。

ここで使用したCMP21はカタログによると5秒(95%応答)ですから、比較的早い方と言えます。対するMIJ14RADは0.3μsec(99%応答)になり、おおよそ0.3/5000=6×10^-5、5桁の相違です。

測定値が急に下がったときに、エラーがマイナス側に振れ、測定値が急に上昇したときに、エラーがプラス側に振れるという特徴が見えます。ここで言うエラーとはMIJ14RAD÷CMP21です。

次に、エラーと勾配W/m2/secの関係を見てみましょう。

Error_DeltaW.gif
驚くことに、とても素直な関係にあります。応答速度の相違によるエラーと断定してよさそうです。さらに予想と異なり、±10W/m2/sec程度の変化でも5%程度の誤差に相当しています。この程度の変化は実際の日射強度の変化においても、頻繁に見る範囲です。

Error =0.0036×ΔW+1.0
Error:CMP21/MIJ14RAD
ΔW:CMP21の1秒間での変化した出力(W/m-2/sec)

式にすると、なんだか論文風に見えてしまいますねえ。第二項の1.0は勾配が無いときのエラーという意味で、1.0はエラーが0を意味します。

エラーの定義をMIJ14RAD÷CMP21ではなくて、MIJ14RAD-CMP21にしても同様な相関関係が得られ、以下になります。
Error_DeltaW2.gif

Error =1.6953×ΔW+4.6103
Error:MIJ14RAD-CMP21(W)
ΔW:CMP21の1秒間での変化した出力(W/m-2/sec)

意味するところは同じですが、絶対値を補正していて第二項が4.61。意味はわかりませんが、第一項が今回の解析範囲でも±45W程度に相当するので、その1/10と考えると誤差範囲なのかなと思います。もし、上昇速度と下降速度に差があったとしても切片は関係ないですし。

あ、今気がつきましたが、4Wというと熱型の出力が0.03mV程度なので、ロガーが拾ったノイズレベルという見方が良いかもです。


フォトダイオードの熱型に対する優位性を示したかったんですが、確かに示せてはいると思います。しかし、どっちかというと、熱型の応答速度起源のエラーをフォトダイオードで補正できそう、という方向が面白いかもしれません。だって世の中、既に熱型があふれていますから。そして高度なレベルの観測では1%未満のエラーを追及してもいますしね。瞬時値に10%以上のエラーが含まれていて、それを補正できれば、それはうれしいことじゃないかなあと思います。ま、曇りの日だけの話ですが。

曇りの要因が水蒸気や雲であれば、今回の勾配の変化は、主に雲の厚さに依存していると思われ、雲の透過スペクトルの形は変わらず、透過の度合いが変わるだけと考えられます。そうすると、応答速度の違いによる熱型の瞬時値に含まれるエラーの補正が出来る可能性は示せるかなという意味です。8分間で、他の条件(入射角、温度特性など)や、センサーの状態などもそう変化していないと思いますし。

総じて言うと、前回の「フォトダイオード日射計」で評価した、曇りの日のエラーは、これはフォトダイオードのエラーを表現したつもりでしたが、熱型のエラーを表現してしまった。というほうが正解かなあと思います。前回は10秒平均値を5分インターバルでデータ取りしていますので、今回よりもエラーが低く見えるというだけ。したがって、日積算値の年変動でしか評価方法は残っていません。これはとても時間を要するので、この話の続きは先になります。


話を戻して、こんな数字遊びは、どちらかというと僕を含むマニア向けか、微気象、森林のギャップの計測やPV向け、つまり高速度で計測せざるを得ない場合のお話です。飛行機に搭載してという場合は、もはや熱型は思いっきり不利でしょう。PV向けの場合はリファレンスセルと呼ばれるものを基準にすることがありますけど、それは入射角特性、温度特性などが無茶なので、太陽光強度を計測しているというよりも、小さな太陽パネルを置いてみた、というくらいの意味しかないでしょうから、確度という意味ではとても意味があるけども、精度という意味で、もしくは環境においたとき、という評価では意味がなくなります。

そういう理由で、熱型のほうがよいという文脈もネットだけでもよく目にしますが、今回の考察で、そうとも断言できないもんね、という根拠が示せたと思います。少なくとも10秒超えの応答速度の熱型は、問題の方が多いかもしれないという話を以下に。

少し一般論に戻して、一般的には日積算値がミニマムの値なので、もっとシンプルに、ただ瞬時値を積算するだけでも、ここでお話しした補正、もしくは応答速度の問題をクリアにする事が可能です。

この方向の場合、付け加えるならば、5秒未満応答速度の熱型に限っての参考例(ソレしか持ってないので)としてですけど、10秒平均値ではエラーは半分にもならず、100秒越えで1%、600秒で0.5%になりえるとは言えます。これはグラフで表現します。
Ave.gif

ただし、大前提として、今回の考察は1秒のインターバルが元になっているところが注意です。10Hzで評価するとエラーはもっと大きくなるでしょう。地表に達する実際の太陽光線の周波数解析が先になり、変動周波数の分布を確認してからインターバルを設定しないと本当の意味での考察にはならないと思います。ここは論文じゃないから勘弁してね。これ書いているのは研究者じゃなく、ただの職人ですから、ものづくりが一番の目的なんです。

一般向けに言えることとしては、応答速度が10秒以上のファーストクラスやセカンドクラスをお使いの場合(中には30秒かかるものもあります)で、日積算以外の値をパラメータにしている研究の場合は、曇りの日や人工的に遮光するなどの場合、とっても注意が必要だとは言えます。

日本環境計測国産部門担当HK
http://www.environment.co.jp/
posted by EMJ-TM at 12:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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